■「スポーツが死ぬ」

 ランキング100位圏内の選手は割合に裕福だが、そこから漏れた選手は大抵、自国のテニスクラブによるリーグ戦出場や、コーチ業で得た収入で足りない分を埋め合わせている。ところが新型ウイルスの感染拡大を食い止めるため、各国政府が大規模な集会を禁止したことで、そうした安定した収入源も干上がった。

 シャパタワは自身のブログで「選手たちの声を届けたくて、ITFへの嘆願を始めた。知り合いの選手といろいろ話して、今後3か月の予定を聞いたら、中には食べる物にも困る人が出てきそうだと分かったから」と話している。

「問題は、このままでは私のスポーツが死ぬということ。テニスが死ぬ。ランク150位以下の選手は現役を続けられなくなる」

 新型ウイルスの影響で、シーズンは少なくとも7月12日まで停止する。欧州のクレー大会は全滅で、全仏オープン(French Open 2020)は伝統の5月中旬から9~10月開催に延期された。6月29日開幕のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2020)は中止が決まった。

 英国のタラ・ムーア(Tara Moore)は、今季の獲得賞金はわずか2500ドル(約27万円)だが、生涯獲得賞金は47万3500ドル(約5100万円)ある。その大きな要因は、ウィンブルドン本戦に主催者推薦(ワイルドカード)で出場できていたことで、2016年大会は1回戦を突破して6万2000ドル(約670万円)を稼いだ。

 27歳のムーアは「生死のようにテニスよりも大事なことがあるのは確かだけど、小国の選手の多くは収入がゼロになり、それでいて『自営業』だから福利厚生は受けられない」「多くの選手は、これから数か月を生き延びるのが難しい」と話し、シャパタワの訴えに同調する。

 最高でダブルス世界15位を記録したアラ・クドリャフツェワ(Alla Kudryavtseva、ロシア)も、飢饉(ききん)のような現状に同情する。2008年のウィンブルドンでマリア・シャラポワ(Maria Sharapova)氏を破り、脚光を浴びたクドリャフツェワは、ダブルスを主戦場に300万ドル(約3億2500万円)の賞金を稼いできた。

「私は貯金があるから心配していないけど、テニスを仕事にしようと思ってプロに転向中の若手はどうするの? お金を貯める余裕なんてなく、自分への投資を続けてきた選手は? そのお金は奨学金とは訳が違う」

 この件についてITFに質問をしたが、現時点で回答はない。(c)AFP/Dave JAMES