■いつか悪夢として過ぎ去って

 息子のオリベル(Oliver)ちゃんは、体重3600グラムで無事生まれた。しかしそのまま保育器に入れられ、新型ウイルスの検査で陰性と判定されるまで他の新生児たちから隔離された。母親のムロさんだけが48時間後に帰宅させられた。

 マスクと手袋をした夫婦がオリベルちゃんを家に連れ帰ることができたのは、生後10日目だった。「小さなチャンピオン、一緒に家に帰ろうね」。感極まる再会の際、ムロさんが初めて息子にかけた言葉だ。「まるでその日に生まれたみたいだった」

 14日間の隔離期間は終わっていたが、検査キットの不足で陰性を確認できないため、ムロさん夫婦はまだ手袋とマスクをしている。カリージョさんは「今も手袋をはめた状態でしか息子に触れていない…早く隔離を終えて子どもに触り、キスしたい」と語った。

 親として新米の2人は、家族の助けを頼ることもできない。ムロさんの両親は近くに住んでいるが、スペインは都市封鎖下にあるため、遠く離れて暮らしているようだとカリージョさんは嘆いた。

「今はつらいけど、私たちは乗り切ってみせる」とムロさん。「あっという間にオリベルは生後1か月になるし、私たちも外出できるようになる。オリベルも祖父母や叔母さん、叔父さんの顔を見ることができる。つらかったことはすべて悪夢として過ぎ去ってくれるでしょう」 (c)AFP/Benjamin BOULY RAMES