■イタリアのスタートアップ

 イタリアでは、若き技術者アレッサンドロ・ロマイオーリ(Alessandro Romaioli)氏が、同様のプロジェクトを進めている。同氏は、3Dプリンターに特化したスタートアップ企業イシンノーバ(Isinnova)に勤める技術者だ。ここでは普段、地震探知機や自転車用の部品などを3Dプリンターを使って出力している。

 世界的なコロナ禍においてイタリアは最も大きな影響を受けた国の一つとなった。北部ブレシア(Brescia)にも大きな被害がおよび、同市の病院も窮地に陥った。そこである地元紙が、この病院を救済する方法を模索し、ロマイオーリ氏とイシンノーバにアプローチしたのだ。

 ロマイオーリ氏はAFPのインタビューで、「問い合わせは、ベンチュリバルブを3Dプリントできるかという内容だった」ことを明らかにし、この部品が人工呼吸器の不可欠な部分であることを説明した。

 だが、実際にできるのかどうか、ロマイオーリ氏には自信ががなかった。そのため、イシンノーバのチームは病院を訪れて部品を詳細に調べ、3Dプリンターで使用するための設計図を作成した。

 こうした部品の許容誤差はとても小さく、それが本当に使えるのか誰にも分からなかった。しかし、出力した試作品4点を病院に持って行くと病院側から「成功した」ことが伝えられた。ロマイオーリ氏は、「結果は上々だった。病院から『素晴らしい! あと100個は必要だ』と言われた」と述べた。

 病院側は今回の成果を歓迎した。マウロ・ボレッリ(Mauro Borelli)院長は、3Dプリンターを絶賛し、「人工呼吸弁を使い尽くしてしまい、患者にどうやって酸素を供給するのか途方に暮れていた」「3Dプリント技術がわれわれを救ってくれた」とコメントした。(c)AFP/Anne CHAON/Arman SOLDIN