【3月28日 AFP】新型コロナウイルス対策の封鎖措置が多くの地域で実施されている米国では、カップルのけんかからトイレットペーパーの買い占めまで、封鎖下で起きるさまざまな出来事が笑いの種となり、人々の気分転換に一役買っている。

 米国民の50%以上が何らかの封鎖措置を受け、「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」などの人気コメディー番組が放送を中止する一方で、多くの人々がインターネットのミーム(笑いを誘う画像や動画)に娯楽を見いだしている。

 動画共有アプリ「ティックトック(TikTok)」には、そろってせきをする振り付けがついたコロナウイルスの歌の動画が130万件投稿された。「#Boredathome(家で暇)」とのハッシュタグをつけ、暇を持て余した人々が踊りやいたずら、巨大なピカチュウのコスプレに興じる一連の動画は、計21億回再生された。

 また、小さなドールハウスの中で立ち上がって「手を洗う」ハムスターのティックトック動画は80万回以上再生された。コメディアンのジョン・オリバー(John Oliver)さんは自身の番組を誰もいないスタジオから放送し、「本当に悲しいことに、ティックトックに12秒間登場したハムスターの方が、何度も国民向け演説をした大統領よりも役立つ衛生管理のアドバイスを提供した」と皮肉った。

 同じくコメディー番組司会者のスティーブン・コルベア(Stephen Colbert)さんは、自宅の浴槽から生中継で放送を行い、「明るいことに目を向けよう。ようやく買いだめしたトイレットペーパーを“一気見”できる」とアドバイス。さらに、感染拡大ペースを抑えることを指す「流行曲線の平たん化」にかけて、「今の自分の運動不足と、ストレス解消のためのお菓子作りの量からすると、私の体の曲線は平たんには絶対ならない」と冗談を飛ばした。

 トレバー・ノア(Trevor Noah)さんは、感染を防ぐための対人距離の確保を指す言葉「ソーシャル・ディスタンシング」になぞらえて、自身の番組を「デイリー・ソーシャル・ディスタンシング・ショー」と改名。ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の危機管理に不安を覚える視聴者に対し、バラク・オバマ(Barack Obama)政権の「最初の8年間を一気見する」よう提案した。

 新型コロナウイルスの流行が危機的状況になる直前に実生活で交際を始めたコメディアンカップルのテイラー・トムリンソン(Taylor Tomlinson)さんとサム・モリル(Sam Morril)さんは、2人で家に缶詰めとなった生活を脚色して描いた短編動画シリーズ「New Couple Gets Quarantined(付き合いたてのカップル、隔離される)」を公開し、多くの視聴者を獲得している。

 トムリンソンさんはインスタグラム(Instagram)に投稿した1話目の動画に「パンデミック(世界的な大流行)が始まる直前に新しい遠距離恋愛を始めてはだめ」とのコメントを添えた。あるエピソードでは、モリルさんに向かって「あなたとここに閉じ込められるなんて。『キャスト・アウェイ(Castaway)』のトム・ハンクス(Tom Hanks)になったほうがまし」と叫ぶが、「僕は今のトム・ハンクスになったほうがまし。コロナウイルスに感染しているからね」と言い返される。

 さらには、硬派メディアの米誌ニューヨーカー(The New Yorker)までもが、「コロナウイルスに関するいくつかのガイドライン」と題したコラムを公開し、世に出回っている矛盾したアドバイスをからかった。

「パニックに陥る必要はない。(中略)ストレスを感じることは普通であり、ほとんどの米国人は今ストレスを感じている。全く健康的な体の反応だ。ただ『健康』とは言ったものの、これは非常に危険だ。なぜなら、ストレスは心臓病の主な原因となるから。良いことといえば、心配を続ければ心臓発作で死ぬため、ウイルスに感染しなくてもすむことだ」 (c)AFP/Andrew MARSZAL