【3月27日 AFP】ゲーム愛好家やビットコイン採掘者(マイナー)、大小さまざまな民間企業が力を合わせ、新型コロナウイルス治療の研究を加速させようと取り組んでいる。

 計算生物学者らの率いるプロジェクト「Folding@Home(フォールディング・アット・ホーム)」では、個人・企業が所有するパソコンやゲーム機の余剰パワーを結集し、前例のないデータ高速処理を実現。ウイルスの構造解析に必要な数兆桁の計算に対応できる事実上世界最強のスーパーコンピューターを開発した。

 プロジェクトの拠点は米セントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)。プロジェクトディレクターのグレッグ・ボウマン(Gregory R. Bowman)助教授(生化学・分子生物物理学)によれば、この2週間で40万人以上が「Folding@Home」専用アプリをダウンロードした。

 多数のコンピューターをネットワーク接続して仮想スーパーコンピューターを構築する「分散コンピューティング」を用いたこのプロジェクトは、もともと20年前に米スタンフォード大学(Stanford University)で始まったものだ。クラウドソーシングにより強化した演算能力でシミュレーションを行い、病気について、特に病原体の致死性を高める「たんぱく質の折りたたみ(フォールディング)」の異常について、理解を深めるため設計された。

 今回の取り組みでは大規模な解析によって、新型コロナウイルスの構造上に治療薬が干渉できる「ポケット(穴)」を見つけ出そうとしている。

「主要目的は、治療薬の結合部位を探すことだ」とボウマン氏。強力な仮想スーパーコンピューターでは、候補となった薬剤の治療効果をシミュレーションで確認できる。コンピューター創薬と呼ばれる手法だ。

 プロジェクトチームが以前エボラウイルスで治療薬の標的を発見していることや、新型コロナウイルスの構造が既存研究の多い重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスと似ていることから、ボウマン氏は楽観的な見通しを示している。「近い将来に最も期待がかかるのは、いずれかの部位に結合できる既存の薬剤を見つけられるかどうかだ」