【3月25日 AFP】人間と同じようにネズミも互いに助け合い、飢えている仲間には餌を分け与える。だが、他のネズミが本当に飢えているのかどうか、どうして分かるのだろう?

 ネズミ同士が互いの空腹状態を感知するのは、餌をねだるしぐさや鳴き声よりも匂いからであることを示唆する研究結果を24日、独ポツダム大学(University of Potsdam)の研究チームが米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLOS Biology)に発表した。

 論文の主著者カリン・シュネーベルガー(Karin Schneeberger)氏は、社会性のある動物が「うそつき」やただ乗りする仲間を見分ける方法に関心を持ったという。

 実験対象としたドブネズミ(学名:Rattus norvegicus)は先行研究で、互いに餌を分け合うことが明らかになっていた。さらにあまり好まないニンジンよりも、「価値の高い」好物のバナナをくれた相手に恩返しをする傾向があることも分かっていた。

 だが、餌をねだる鳴き声やしぐさを示すネズミが必ずしも実際に空腹とは限らず、中には仲間をだまして餌を手に入れるネズミもいると科学者らは考えていた。

 これを実証するために研究チームは、一晩餌を与えられていない飢えたネズミと、餌を十分与えられているネズミ、さらに仲間への寛容度を試すための「焦点」となるネズミをそれぞれ別々の囲いに入れた。そして飢えているネズミと飢えていないネズミの囲いから、焦点のネズミの囲いへ空気を送り込んだ。

 飢えているネズミの囲いから空気が送り込まれると、焦点のネズミはすぐに助けを差し伸べ、飢えているネズミが届くところまで餌のトレーを引っ張って移動した。

 焦点のネズミ16匹で実験した結果、飢えているネズミを助け始めるまでにかかった時間は平均29秒、飢えていないネズミに対しては平均85秒だった。

 研究チームはさらにネズミたちの周囲の空気を分析した結果、7種類の有機化合物が含まれていることを発見した。空気中に含まれるこれらの有機化合物の量は、飢えているネズミと飢えていないネズミで大きく違った。

 その差を生んでいるのは直近で消化した餌の内容、消化にまつわる代謝過程、あるいは空腹状態を表すフェロモンなどだと考えられる。ネズミはそうした要素すべてが合わさって発生する「飢えの匂い」を、他のネズミの空腹状態を知る手掛かりにしていると、シュネーベルガー氏は述べている。

 さらにシュネーベルガー氏はこの匂いによって、ネズミはただ乗りをする仲間を見分けるだけなく、仲間の飢えを和らげる行動に出ていると推測する。同氏は「これを『共感』と言ってしまうと擬人化しすぎなのでそう呼びたくはないが、ネズミは感情の状態からそうした行動を取るのかもしれない」「苦痛を感じている個体が隣にいると、自分もストレスを感じるということかもしれない」と語った。

 同氏によると、さらにネズミは人間同様、最終的に自分の利益になるより有意義な集団に投資をしている可能性もあるという。(c)AFP/Issam AHMED