中国の「マスク外交」、新型ウイルス流行めぐる批判かわす狙いか?
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【3月22日 AFP】数百万枚のマスクや低金利融資の提供、医療チームの派遣──中国政府は新型コロナウイルス流行の初期対応に不手際があったとする批判をかわし、「善きサマリア人」になろうとしている。
中国は苦境にあえぐ欧州各国に対し、「ほほ笑み外交」の一環として大規模な支援を提供。ここ数週間はフィリピンやパキスタンに大量のマスクや検査キットを寄付し、イランやイラクに医療チームを派遣、スリランカには新型ウイルス対策費として5億ドル(約550億円)を融資した。
中国国営新華社(Xinhua)通信が報じたところによると、習近平(Xi Jinping)国家主席は、新型ウイルスによる打撃が最も深刻なイタリアとスペインの両首相と相次いで電話会談し、支援を表明。特にイタリアには二つの医療チームを派遣し、習氏が進める経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」への参加を欧州連合(EU)の中でいち早く表明した同国との連帯感を演出した。
さらに先週はセルビアへの支援を表明し、医療用品を送付。同国のアレクサンダル・ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領は、中国から送られたウイルス検査キットが到着すると、中国大使に対し「あなた方がいなければ、欧州は自分たちで身を守ることは難しいと分かった」と話し、セルビアは「中国の兄弟」を待っていたとも伝えた。
EUは15日、医療用品の輸出を禁じると発表。EUに加盟していないセルビアのブチッチ大統領は、こうした動きを非難している。新華社によると、中国から送られたさらなる支援物資と医師団は、近日中にセルビアに到着する予定だという。
中国政府は近年、厳しい経済状況にあるバルカン半島諸国への影響力をめぐり、特に相手国に多額の債務を負わせるインフラ投資を行うなどしてEUへの対抗姿勢を示している。
19日付の中国共産党機関紙・人民日報(People's Daily)の第1面には、他国に進んで協力する「責任ある大国」としての中国の役割を強調する論説が掲載された。
こうしたことの背景には、米中両政府が公の場で繰り広げている言葉の応酬がある。中国は最近、多数の米国人ジャーナリストを国外退去処分にした。一方のドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、新型ウイルスに言及する際、「中国ウイルス」という言葉を使い続けている。
新型ウイルスとの闘いが米国にまで及ぶ中、中国は米国に取って代わって世界のリーダーになろうと急いでいると専門家らは指摘する。
独ハイデルベルク大学(Heidelberg University)で中国の対外援助について研究するマリナ・ルディアック(Marina Rudyak)氏は、「トランプ政権下の米国が、国際社会に対し意味のある対応策の提示に失敗し、欧州諸国が国内対応で手いっぱいとなっている今、中国政府には空席をものにするまたとない機会が訪れている」と指摘する。
ルディアック氏は、そうすることで中国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期にそれを隠蔽(いんぺい)しようとしたという批判をかわし、「対応を遅らせた国々や備えが中国ほど万全でなかった国々」の救世主として振る舞い、新型ウイルスの流行をめぐるストーリーを書き換えようとしているとも述べた。
一部の欧州諸国では、こうした戦略が功を奏しているようだ。在中国の欧州連合商工会議所(EUCC) のイエルク・ブトケ(Joerg Wuttke)会長は、「欧州では、矛盾する筋書きが展開しつつある。大半の人々は、世界的危機を引き起こした責任は中国にあると考えている」「だが、中国からの寛大な人道支援は、欧州の世論をより中国に友好的な方向に導く可能性がある」と述べた。(c)AFP/Laurie CHEN