■料金は1人1年11万円から

 ルネ氏を含む5人から成る委員会が緊急時に「破滅のシナリオ」を宣言した場合、全メンバーがこのキャンプに身を潜めるよう招集される。その後は秘密のパスワードを提示しない限り中に入ることはできない。病気の流行の場合は、非接触型体温計での検温が入場の条件となる。中には井戸、ソーラーパネル、無線装置、温室が備えられている他、ニワトリ、ヤギ、ウシも飼育しており、自給自足が可能だ。感染した恐れのある遺体を火葬する場所もある。また、コロラド州にも支部がある。

 フォーティテュード・ランチの創設者、ドリュー・ミラー(Drew Miller)氏は、全米の12か所にこのような場所をつくりたいと考えている。

 ハーバード大学(Harvard University)を卒業し軍の諜報(ちょうほう)専門家としての経歴も持つミラー氏は、超富裕層が建てる「ラグジュアリーな掩蔽壕」ではなく、中産階級の市場を狙っている。掩蔽壕の共同寝室に寝台を一つ確保する料金は、年間1人1000ドル(約11万円)からだ。

 ルネ氏によると、敷地内にある複数の建物に合わせて最大500人を収容することができる。新型コロナウイルスの流行が全米に広がって以降、問い合わせが増えているという。「埋葬費を出す生命保険ではなく、実際にあなたの命を守る生命保険のようなものです」と話した。

 ルネ氏の隣に置かれたノートパソコンには、新型コロナウイルスの拡大をリアルタイムで示す地図が表示されていた。フォーティテュード・ランチの付近には、感染例を示す赤い点は一つもなかった。16日の時点で、ウェストバージニア州は感染例が報告されていない唯一の州だった。(c)AFP/Sébastien DUVAL