【3月18日 AFP】新型コロナウイルスの予防策としてマスクや手袋を着用することについて、専門家らが17日、大半の人にとっては効果がなく不必要であると指摘した。さらに、使い方によっては感染をより速く拡散させる恐れすらあるという。

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 イタリア、スペイン、フランスなどで、ほぼ全面的な封鎖措置が講じられるなか、世界保健機関(WHO)の勧告は世界的な流行が始まってから変わっていない──手洗いをし、顔に触れず、人混みに近づかないようにすることだ。

 WHOによると、自分自身や看護対象者に感染の疑いがある場合は、公の場での防護マスク着用が望ましいという。この場合、できる限り外出を控えることが求められている。

 世界は現在、医療専門家向けのマスク不足に直面しており、パンデミック(世界的な大流行)が長引くことで、この問題がさらに悪化する恐れもある。だが、マスクに関する専門家らのメッセージがすべての人々に届いているわけではない。

 フランスのオリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は16日、「通りを歩く人の多くがマスクをしている。これは保健省の勧告に該当する措置ではない。保健省の窓から見える光景に驚いている」と述べている。

■マスクの汚染

 マスクをめぐっては、いくつかの問題があると専門家らは指摘する。医療専門家らの間で最も必要とされる在庫が急速に消費されていること、そして着用している人々に安全に対する誤った意識を与えることだ。

 例えば、マスクを着用する人の多くにみられるのは、最初に入念に手を洗い、気密性を確保し、いったん着用したら触れないようにするという公式の勧告に従わない姿だ。

 仏保健当局のジェローム・サロモン(Jerome Salomon)氏は、「人々は常にマスクの位置を調整し直しているが、それによってマスクが汚染される可能性がある」としながら、ウイルスへの暴露によって確実にマスクへの付着も起きると指摘する。

 手袋も同様だ。予防効果を大幅に高めるどころか、着用者を感染させる恐れすらある。米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の専門家アメシュ・アダリヤ(Amesh Adalja)氏は、AFPの取材に「顔に触れるのを止められないなら、手袋は何の役にも立たない」と説明する。

 2015年に医学誌「米感染制御ジャーナル(American Journal of Infection Control)」に発表された研究では、人々が顔に触れる回数は1時間に平均20回に上ることが明らかになっている。

 アダリヤ氏は、「手袋は手洗いの代わりにはならない」として、手術用手袋は医療機関内でのみ使用するべきだと念を押した。

 ベラン保健相も「手袋をしている人は、手を洗わなくなる」と述べ、注意を促している。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS