【3月16日 AFP】ドイツのバイオ技術企業が開発した新型コロナウイルスへの効果が期待できるワクチンをめぐり、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が独占権を購入したいと提案したとの報道を受け、ハイコ・マース(Heiko Maas)独外相は16日、ワクチン研究に関する利権は非売品だと述べた。

 新型コロナウイルスによる死者が6000人を超え、隔離される人が数百万人に上り、世界各地で株価が急落する中、科学者らは先を競ってワクチン開発を急いでいる。

 こうした中、独紙ウェルト(Die Welt)は独政府に近い筋の情報として、トランプ氏が独バイオ技術会社キュアバック(CureVac)のワクチン研究を「米国のためにのみ」確保するため、「10億ドル(約1060億円)」を提供すると提案したと報じた。

 マース氏は、独メディアグループ・フンケ(Funke)のインタビューで、「ドイツの研究者は医薬品やワクチンの開発をけん引する立場にあり、他者が排他的な結果を得ようとするのを許すわけにいかない」と語った。

 これに先立ちペーター・アルトマイヤー(Peter Altmaier)経済・エネルギー相も15日、公共放送ARDに「ドイツは売り物ではない」とコメント。報道を受けて独政界には怒りの声が広がっている。

 ドイツ連邦議会保健委員会の委員で保守派のエルビン・リュデル(Erwin Rueddel)議員は「今、重要なのは国際的な協力だ。利己的な国益ではない」と批判した。

 AFPの取材に応じた米当局者は15日、ドイツでの報道は「かなり誇張された」内容だったと説明。「米政府は、ワクチンについて支援が可能だと主張する多くの企業(25社以上)と話しており、これらの企業の大半は既に米国の投資家から資金提供を受けている」「解決策が発見されれば、どんなものでも世界で共有されるだろう」と述べた。(c)AFP