【解説】東京五輪の延期・中止はあり得るのか、新型ウイルス感染拡大で
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【3月16日 AFP】7月24日に開幕が予定されている2020年東京五輪だが、新型コロナウイルスの感染が世界に拡大する中で、中止や延期になる懸念が高まっている。
五輪は予定通り実施されるのか。開催可否の判断をいつ、誰が下すのか。ここではいくつかの選択肢を検証する。
Q:過去に中止になった五輪はあるのか?
A:1896年のアテネ大会から始まった近代五輪で、中止になったのはこれまでに5回。1916年のベルリン大会、1940年の札幌大会(冬季)と東京大会(夏季)、1944年のコルティナダンペッツォ大会(冬季)とロンドン大会(夏季)で、理由はすべて世界大戦だった。
その他には、1976年のモントリオール大会、1980年のモスクワ大会、1984年のロサンゼルス大会で大規模なボイコットがあったが、中止には至っていない。2004年のアテネ大会は、2002年から2003年にかけての重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行の翌年だったが影響はなく、2016年のリオデジャネイロ大会は、蚊が媒介するジカ熱が不安視されたが、大会前には騒ぎも収まった。
Q:2020年東京五輪の中止の可能性は?
A:形の上では、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪を中止する、もしくは開催地を変更する権限を持っている。しかしIOCは「大会組織委員会と連携しながら大会の成功を目指しており、成功に自信を持っている。日本の公的機関や世界保健機関(WHO)とも定期的に連絡を取り合っている」と話しており、中止や代替開催を視野に入れているようにはみえない。トーマス・バッハ(Thomas Bach)会長も、4日の理事会で「中止や延期は話題に出なかった」と話している。
しかし、これから危機が深刻化する恐れもある状況なだけに、中止の可能性を完全に除外することはできない。
Q:開催可否の判断を下すのは誰か?
A:正式な権限はIOCにある。IOCと大会組織委員会が交わした契約には、「参加者の安全に重大な危機が生じた場合」、開催権をIOCが取り消すことができると記されている。しかしバッハ会長は「その件については議題に上がっておらず、検討すらされていない」とかたくなに否定している。
Q:延期の可能性は?
A:理論上はあり得る。大会組織委員会は特定の年に五輪を開催する使命を担っており、東京の場合は2020年となる。その論理に従えば、2021年以降に延期となった場合、東京は開催権そのものを失う。しかし、IOC委員の3分の2の投票があればその点は考慮される可能性があり、それをもってIOCが延期を決めるケースも考えられる。
ただしそれ以上に、現実問題として日程の変更は難しい。世界のスポーツカレンダーはすでに過密状態で、マイナー競技であれば直前の延期決定でも対応できる余地があるが、サッカーやバスケットボール、テニスなどの人気競技はおそらく日程の調整が難しい。
報道各社も延期には強く反発するとみられる。多額の放映権料を支払い、9億7000万ドル(約1030億円)を投じて広告を打っている米テレビ局NBCなどは、プロバスケットボール(NBA)のような高収益の見込める人気競技と五輪とのバッティングを嫌がる可能性が高い。
Q:無観客開催の可能性は?
A:東京五輪に向けては、この後も水泳や体操、自転車など、競技によっては予選も兼ねたテスト大会が15ほど予定されている。その中には、競技団体が無観客での開催を検討しているものもあり、組織委員会は、「ケース・バイ・ケース」で考えると話している。
一方で、無観客に難色を示している団体もある。7人制ラグビーでは、テスト大会を兼ねるアジアセブンズインビテーショナル2020(Asia Sevens Invitational 2020)が4月に東京で開催される予定だったが、大会側は無観客が望ましくないことを示唆して中止にした。
また、仮にテスト大会で観客を入れなかったとしても、五輪本番で同じことをするのは至難の業で、収入面での痛手も大きい。東京大会はすでに450万枚のチケットが売れている。
Q:判断の期限はいつか?
A:IOCはこの件に言及しておらず、東京大会の「成功」を信じているとだけ繰り返している。もっともこれは、不用意な臆測がチケットの売り上げや選手の参加の意思に影響しかねないことを考えれば、当然と言える。
この件についてあえて口を開いたのは、今のところ世界反ドーピング機関(WADA)の元会長で、IOCの上級委員でもあるディック・パウンド(Dick Pound)氏のみ。パウンド氏は2月、「1か月前か2か月前かは分からないが、どこかの時点で誰かが『イエス』か『ノー』か決めなければならない」と話した。
東京五輪には莫大(ばくだい)な金がかかっている。東京都などはインフラ整備と大会の準備に数兆円を費やしているが、それらに保険は適用されない。それだけに、地上最大のスポーツの祭典の電源を抜くにしても、IOCと組織委員会は可能な限りそのタイミングを遅らせようとするだろう。(c)AFP/Eric BERNAUDEAU