【3月11日 AFP】イランの刑務所内で新型コロナウイルスの感染が拡大しているとの懸念が浮上する中、イラン当局は抑止措置として受刑者7万人を一時釈放したが、イランの人権状況に関する国連(UN)特別報告者のジャバイド・レーマン(Javaid Rehman)氏は10日、対応が「不十分で遅すぎる」とイラン当局を批判した。同氏はさらにイラン当局が対応ミスを「ごまかそうとしている」とも非難した。

 イランは新型ウイルスの発生地となった中国以外で死者が多く出ている国の一つ。レーマン氏は、2月19日にイスラム教シーア派(Shiite)の聖地コム(Qom)で2人の死者が報告されて以来、イランで広範囲に感染が広がっていると指摘。「(感染は)急速に拡大してきた。私の考えでは、イランの対応が不十分で遅すぎる」と述べた。

 イランは9日、過去24時間で新たに54人が死亡したと発表。流行開始以来、1日の死者としては最多となった。これまでの累計死者数は291人、感染者数は8042人となっている。

 さらに最近の報告で、イランの刑務所内で感染が拡大していることが示唆されていた。イラン司法当局の公式ニュースサイト「ミザン・オンライン(Mizan Online)」は刑事施設機構トップの発表を引用し、感染拡大を抑止するために「約7万人の受刑者」が一時釈放されたと伝えていた。

 しかし、レーマン氏はこの一時措置は「釈放条件が定かでなく、釈放期間も明確でなく」不適切な対応だと批判。また同氏はイラン当局に対し「全受刑者を一時釈放すべき」だと勧告していたが、一時釈放されたのは禁錮5年以下の受刑者のみで、政治犯や外国籍・二重国籍の受刑者は対象外だという。

 レーマン氏は「多くの受刑者が、国家は十分な対策を講じていないと不安を訴えている」と述べ、イラン当局はこの問題を「ごまかそうとしている」と述べた。

 イランの刑事施設は過密状態、栄養不良、基本的な衛生管理の欠落などが指摘されており、「病気の温床だ」とレーマン氏は述べている。(c)AFP/Robin MILLARD