【3月4日 AFP】中国当局が新型コロナウイルスの感染規模について公式に認める数週間前から、インターネット上で新型ウイルスに関する情報を検閲していたとの調査結果を3日、ネット検閲などを監視するカナダ・トロント大学(University of Toronto)の研究機関「シチズンラボ(Citizen Lab)」が発表した。

 中国当局は1月20日になるまで新型コロナウイルス流行の深刻性を公に認めていなかったが、昨年12月31日の時点でネット検閲を開始していたとシチズンラボは指摘。流行初期の数週間は、「未知の武漢(Wuhan)肺炎」「武漢市衛生健康委員会」といった一般的な単語もタブー扱いされていたという。

 シチズンラボによると、今回の研究によって中国政府がヒトからヒトへの感染の広がりを認める3週間前に、中国で少なくとも一つのソーシャルメディアが一部のウイルス関連コンテンツを非表示にしていたことが明らかになったという。これは「流行初期の段階で、政府がソーシャルメディア企業に対し、情報を検閲するようにとの圧力をかけていたことを強く示唆する」と報告は指摘している。

 中国では政府に対する批判や抗議を含め、政治的にセンシティブとみなされるコンテンツをソーシャルメディア企業が削除することは一般的だ。

 シチズンラボは、月間アクティブユーザー数が10億人を超えるメッセージアプリ「微信(WeChat、ウィーチャット)」で昨年12月末から今年2月中旬にかけて、500以上の単語や語句がブロックされていたことを明らかにした。ライブストリーミングアプリ「YY(歓聚時代)」でも同様で、二つのアプリはまた事実に基づく情報を含む幅広いキーワードを検閲していた。

 例えば、シチズンラボが2月14日に実施した試験では、「肺炎」「疾病対策」「ウイルス」「医学誌」といった言葉を含んだメッセージが検閲された。

 新型コロナウイルスの流行について初めに警鐘を鳴らした医師の死によって、2月には珍しく政治改革を求める声が上がったが、中国政府は検閲をいっそう強化。習近平(Xi Jinping)国家主席は、「前向きの力」と社会の安定を確保するためにとしてインターネット上のやりとりに対するさらなる規制強化を求めた。

 香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の通信研究専門家ロックマン・ツイ(Lokman Tsui)教授は、「これまでのところ、中国政府が今回の危機から引き出しているのは、弾圧を弱めるのではなく強める必要があるという誤った結論だ」と述べている。(c)AFP