■米国以外の指導者も平均より背が高い

 マレー氏によると、身長が高い指導者ほど特に紛争時には強いとみなされるという。だが、背の高い指導者が好まれるのは米国だけではない。

 例えば、安倍晋三(Shinzo Abe)首相やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、自国の男性の平均身長を上回っている。選挙で選ばれたわけではないが、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は180センチだ。

 専門家によると、長身は政治の世界では概して有利に働くとともに、あらゆる職業および地位において同じことが当てはまるという。

 どの国においても「背の高い人は組織内で、より高い地位に就く機会が多くなるという圧倒的証拠がある」と指摘するのは、オランダの学者アブラハム・ブンク(Abraham Buunk)氏だ。同氏は、社会科学誌リーダーシップ・クオータリー(Leadership Quarterly)に2013年に掲載された研究論文「身長がものを言う? 歴代米大統領の身長の重要性に関する意味と無意味(Tall claims? Sense and nonsense about the importance of height of US presidents)」を共同執筆した。

 研究は「背が高い候補が有利であることは、背の高さと関連付けられた認知によって説明できる可能性がある。つまり、背が高い大統領は他の人より『偉大』であり、指導力とコミュニケーション能力に優れていると評価される」と説明している。

 ブンク氏によると、同氏と同僚3人が米大統領の身長に注目するきっかけとなったのは、同僚のカナダ人大学院生が自分はいつも背が高いと思っていたのに、オランダに来たら「平均身長だと感じた」と話したことだった。オランダ人男性の平均身長は約183センチで、世界で最も高い。

 ブンク氏は電子メールでAFPの取材に応じ、「われわれは身長の心理学的影響を研究することにし、まずはねたみを調べてみた」と述べた。

■女性の身長は「物理的脅威」にならない

 2020年の大統領選の民主党候補者選びには2人の女性が名乗りを上げていた。そのうちの一人、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は約173センチと、撤退を表明したピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)氏とほぼ同じ身長だった。

 一方、同じく撤退を表明したエーミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)上院議員は、それよりも10センチほど低い。同氏は昨年12月の討論会で、第4代米大統領ジェームズ・マディソン(James Madison)のことを「5フィート4インチ(約163センチ)と、大統領にぴったりの身長だった」と冗談交じりに言った。

 2016年の大統領選でトランプ氏の対立候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官は、165センチだった。その年の討論会でトランプ氏が、発言中のクリントン氏の背後に立ったことに対し、カメラを独り占めして無作法だとする人や、あからさまないじめだとする人がいた。

 マレー氏によると米国において身長は、女性にとっては生まれつきの問題だという。なぜなら、強い指導者を求める有権者にとって女性の身長は「物理的な脅威」とは思えないからだ。

 対立候補よりも背が高いことを見せびらかしたがるトランプ氏だが、いつも望むような効果を得られるとは限らない。2016年の共和党討論会の写真では、ジェブ・ブッシュ氏の方がトランプ氏よりも背が高いのは明らかだった。(c)AFP/Danny Woolls