【3月21日 AFP】エジプトの首都カイロの歴史地区ダーブ・アフマル(Darb al-Ahmar)にあるサラマ・マフムード・サラマ(Salama Mahmoud Salama)さんの伝統的な染色工房では、あらゆる種類の糸を染める職人が忙しく駆け回る。

 ハンドメードの靴からラグ、カーテンまで、あらゆるものに使用される滑らかな長い糸を並べ、染料の入った大きな熱い釜に浸す。染料や湯気から身を守る手袋やマスクは着用していない。

「まず糸を平らにして、染料に浸し、塩を加えて色合いを調整します」と、83歳のサラマさんは忙しい朝の作業中に語った。「水分を含んだ糸をすすいだら、電気プレッサー内に平らに伸ばし、乾燥させます」

 この工房はカイロ旧市街で、約120年間にわたり操業を続けている。市内にはかつて染色工房が23あったが、今ではほんの一握りしか残っていない。

 工業用の染色工場では通常、一度に少なくとも1トンの糸を扱うが、サラマさんが一度に染められるのはせいぜい500グラムだという。

 サラマさんの顧客はエジプト中から、そしてスーダンや米国からも訪れる。だが、サラマさんは、外国製品との競争で国内の繊維産業が打撃を受けていると語る。

「カイロ旧市街のアズハル(Al-Azhar)モスクの近くにある人気店では、ウールのセーターが200ポンド(約1400円)で売られていますが、路上で中国製の類似品が30ポンド(約200円)で見つけられます」

 それでも、サラマさんは自身の工芸品の未来について楽観的だ。

「人々が服を必要とする限り、この仕事は決して死なない」とサラマさんは目を輝かせながら語った。(c)AFP