【2月20日 AFP】新型コロナウイルスの感染拡大は、東京五輪出場を目指した一部の中国人選手の夢を打ち砕いた。それ以外にも予選の欠場を強いられたり、厳重に隔離された中で時にはマスクを着けてトレーニングすることを余儀なくされたりするなど、選手の準備を妨害している。

 東京五輪の主催者は、中国・武漢(Wuhan)を中心とし、同国本土で2100人以上の死者を出している新型ウイルスの大流行によって、スポーツ界最大のイベントが頓挫することはないと断固として主張している。

 しかし今回の感染拡大は、2016年のリオデジャネイロ五輪に416人の選手を派遣し、今世紀に入ってからのすべての夏季五輪におけるメダル獲得数でトップ3に入ってきた中国代表のパフォーマンスに影響することになりそうだ。

 これまでのところ中国代表選手の間で感染者が出たという情報はないが、ウイルスの感染拡大は、7月24日に開幕する東京五輪の前哨戦が行われる重要な時期とかぶってしまった。五輪予選を前に隔離され、豪ブリスベン(Brisbane)のホテルの廊下でストレッチをする羽目になった女子サッカーの代表チームは、中でも過酷なケースだ。

 オーストラリアを含めたいくつかの国々が、中国からの入国に関して厳しい渡航制限を課す中、中国側は自国の選手が予選に出られるよう、ライバル国に扉を開くよう求めている。

 新華社(Xinhua)通信によれば、中国オリンピック委員会(COC)の劉国永(Liu Guoyong)副会長は、「2月から4月にかけて世界中で行われる五輪予選は100以上に上る」「国際オリンピック委員会(IOC)はさまざまな国際競技連盟に対し、中国人選手に対して可能な限りの支援を行い、配慮するよう求めている」と話した。

■夢がついえた

 女子サッカー代表では、主力の王霜(Shuang Wang、ワン・シュアン)が地元の武漢から出ることを認められず、最終予選の試合を欠場。屋上でマスクを着けたまま一人で練習に励む姿が撮影された。

 ウイルスの感染拡大の影響で会場が急きょ武漢からオーストラリアに変更になる中、中国代表は王が不在の状況で最終予選でなんとか2勝1分けという成績を収めた。今後は本戦出場を懸けたプレーオフの2試合で韓国と対戦するが、「ホーム」ゲームを海外で行う必要がある。

 少なくともサッカー女子代表は東京五輪出場の夢を残しているが、女子ハンドボール代表は、コロナウイルスの大流行で練習を行えなかったとして、来月ハンガリーで行われる最終予選を棄権。五輪出場の望みがついえた。

 また体操の選手たちも、渡航制限を理由に東京五輪予選の一つである豪メルボルンでのW杯の欠場を強いられたほか、ボクシングやバスケットボール、セーリングの予選会場も中国から他の場所に移された。

■「誰も外に出られない」

 中国は2008年の北京五輪で出場国中最多のメダルを獲得したが、2016年のリオデジャネイロ五輪では米国と英国に続く3位に後退。そうした中で東京五輪は巻き返しを狙っていた大会だ。

 COCの劉副会長は、東京五輪への準備環境が整うことに自信を示しているが、お家芸であるバドミントンと卓球の選手たちは、合宿地をそれぞれ英国とカタールに移すことになったほか、柔道の選手はフランスで行われたグランドスラム・パリ大会(Judo Paris Grand Slam 2020)に出られないなど支障が出ている。

 中国は国内外のチームにウイルス対策として非公開で練習するよう命じている。

 近代五種の代表チームのコーチは、地元メディアに対して「緊急でない限り、誰も練習拠点に立ち入ることはできないし、誰も外に出られない」と話した。

 近代五種の選手たちは、北京市内の大学内にこもっているが、陸上種目の練習場所は立ち入り禁止の屋外のため、代わりにトレッドミルを走っている。選手たちは一日の間に定期的に体温をチェックし、馬術のトレーニングを除きマスクの着用を義務付けられているそうだ。

 すでに東京五輪の出場を決めている選手の一人は、「今回は例外で低酸素トレーニングだと思って取り組んでいる」と語った。選手たちは今週中にエジプトへたち、その後は欧州で五輪へ向けた準備を続けていく予定となっている。(c)AFP/Peter STEBBINGS