■「密入国者ではない」

 ブースさんは当時、出生証明書がないことを気にしていなかった。そして、赤ん坊の父親はブースさんの人生から姿を消した。

 だが数年後、仕事に戻るため確定申告をしようとした時、社会保障番号がないためラッカーさんを扶養家族として申請できないことに気付いた。その頃、一家はミネソタに住んでいた。

 ブースさんは2009年、ラッカーさんの社会保障番号を申請した。だが、出生証明書がないとして却下された。

 ブースさんは2018年に友人のつてで、無料でこの件を引き受けてくれる弁護士を見つけた。だが、何か月も進展はないままだった。

 ブースさんは、この状況は皮肉だと話す。ブースさんは民主党が顧客となっているコールセンターで働いており、米国に不法入国した人々に法的立場を認めることについての世論調査にしばしば携わっているからだ。

「私はトラックの荷台で国境を越えたわけではない。娘は密入国者ではない」とブースさんは訴える。「米国で娘を産んだし、この国を離れたこともない。私は米国市民だ。それなのに娘に法的な立場を与えられないなんて」

■ハッピーエンド

 ラッカーさんは現在ミネソタに住んでいるが、生まれたのはカリフォルニア州だ。このため、二つの州がラッカーさんの件をたらい回しにしてきたと、ラッカーさんの弁護士、ブライアン・リンジー(Bryan Lyndsay)さんは言う。

 エベレスの町長は昨年12月末、ミネソタ州選出の上院議員の一人であるエーミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)氏の事務所に電話をした。

 AFPが1月、同氏の事務所に取材すると、ラッカーさんの件に介入し、連邦社会保障局に連絡を取り、新たな会議が設定されたと説明した。

 その後、何が起きたのかは分からない。だがカリフォルニア州当局は2月、ラッカーさんの弁護士に2018年に作成した遅延出生登録申請書を至急、再提出するよう求めた。

 ついに、ラッカーさんは望んでいたものを手にした。

「今、弁護士事務所から帰ってきた。やっと遅延出生証明書を手に入れることができた」とラッカーさんは大喜びで語った。

 早速、社会保障番号の申請を行い、看護学校に申し込むつもりだ。「ついに自分の人生を始めることができる」(c)AFP/Ivan Couronne