【4月16日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)のでこぼこした薄汚れた道の外れに、子どもたちが群がる一角がある。半分開いたドアの前に陣取り、工場から出てきた従業員を見つけると、「チョコレートちょうだい!」と口々に叫ぶ。

 子どもたちに根負けした従業員は引き返し、虫歯ができそうなほどたくさんのチョコレートを手に戻って来る。

 アルアリーズ(Al-Arees)は、さまざまな障害に立ち向かいながら、チョコレートでコーティングされたビスケットや、ガザ版ヌテラ(Nutella)の「ナタリア(Natalia)」などを製造している。

 製品はガザで作られているが、経済的に困窮するガザでは基本的な原料は生産されていない。チョコレートは遠くアルゼンチンに、砂糖はアフリカ、乾燥卵はオランダ、その他の主な原材料はトルコやイスラエルに頼っている。

 2007年にイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が実効支配して以来、イスラエルはガザを封鎖し、締め付けを強化しており、ガザに持ち込まれるすべての物資の管理を行っている。

 ハマスはこれまでに3度、イスラエルと交戦している。イスラエルは砲撃に対する報復として、ガザを頻繁に空爆している。

 だが、ガザをロケット弾や迫撃砲が襲っても、チョコレート工場はゴトゴトと音をたてながらお菓子を作り続けている。

■ガザ版ヌテラ「ナタリア」

 チョコレート風味のスプレッド「ヌテラ」が世界的に有名だが、ガザではガザ版ヌテラ「ナタリア」が人気だ。だが、いくら人気があっても、利益は出ていない。

 ガザの失業率は50%近くに達しており、販売価格を引き上げることは難しい。イスラエルはガザからの輸出を野菜や衣類など数品目に限っており、加工食品は禁止している。このため、より利益が出る輸出は不可能だ。

 イスラエルとハマスは昨年12月、ガザで製造した菓子類の輸出を認めることで合意した。これにより、初めてガザの菓子類の輸出が実現した。

 だが、一連の緊張緩和のムードは、再び消え始めている。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の中東和平案公表後、ガザから発射されるロケット弾が増え、イスラエルは再び輸出規制を強化した。ガザ住民500人のイスラエルでの労働許可も取り消されてしまった。

 しかし、ガザのある製菓会社の会長は楽観的だ。「ガザで成功できるなら、世界中のどこでも成功できる」 (c)AFP/Guillaume Lavallee and Joe Dyke