■「和解」

 AFPの取材でヒル氏は、「飛行機やヘリコプターでバケツの水を運んでも、森林火災の火は消せない。目を向けるべきは火災の予防だ」と話す。

 全国の消防組織ではすでに、先住民と協力してこの伝統的な野焼きを実施しているが、最も広範にこの古くからの技術を取り入れているのは、北部特別地域(Northern Territory、準州)だ。

 北部特別地域のアーネムランド(Arnhem Land)では、10年以上前に先住民の森林火災予防プログラムが正式に採用された。この取り組みを支援したのは、Warddeken先住民保護区を管理する団体「Warddeken Land Management」のディーン・イバブク(Dean Yibarbuk)氏だった。

 イバブク氏によると、植民地政策を通じてアボリジニ共同体の多くが故郷を追われており、約1万4000平方キロの居住地域がひどい扱いを受けることになったという。

 同団体は現在、科学者らと協力して現代および伝統的な消火技術を組み合わせる包括的な取り組みを進めている。ここでは、先住民の森林保護官を最大で150人雇用し、野生化した動物の管理や文化的遺産保護といった活動に当たっている。

 こうした動きについて森林火災の専門家であるタスマニア大学(University of Tasmania)のデービッド・ボウマン(David Bowman)教授(環境改変生物学)は、同国南部地域の大半が非先住民によって占められているため、伝統的な手法を森林火災予防として大きく取り入れるのは難しいと話す。

 ただ、伝統的な手法が森林火災に対するの唯一の解決策にならなくても、先住民の伝統に敬意を払い、そしてたたえるという「和解」の一環としては非常に素晴らしい役割を担っていると同氏は指摘する。

 それでもイバブク氏は、伝統的な野焼きを防災策としてさらに広く取り入れるよう主張する声に「耳を傾ける」べきと政府に呼びかけ、「彼ら(政府)はわれわれとの関わり合いをここから始める必要がある」と述べる。

「南部では壊滅的なダメージが出ている。その土地に適したやり方で、その土地の先住民のやり方で火災に対峙(たいじ)してもらいたい」 (c)AFP/Holly ROBERTSON