【2月13日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領(73)は政敵を中傷するあだ名をつけるのが好きだが、米大統領選に向けた民主党指名候補争いで勢いに乗るピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)氏(38)については、うまいあだ名をまだつけられていない。「ピート市長」とでも呼ぶのだろうか。

 トランプ氏はツイッター(Twitter)への投稿で、民主党指名候補争いの有力候補らをたびたびあだ名で呼んで攻撃している。バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は「クレージー・バーニー」。ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領は「スリーピー・ジョー」。マイケル・ブルームバーグ(Michael Bloomberg)前ニューヨーク市長は「ミニ・マイク」。エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は「ポカホンタス(先住民女性の名前)」といった具合だ。

 しかし、有力候補として急速に支持を伸ばしているにもかかわらず、ブティジェッジ氏に対する攻撃は驚くほど少ない。

 11日に投開票されたニューハンプシャー州予備選ではサンダース氏が勝利したが、ブティジェッジ氏は僅差で2位につけた。トランプ氏はその後、「Bootedgeedge(原文ママ、Buttigieg) は今夜、かなり善戦している。クレージー・バーニー相手に健闘している。とても面白い!」とツイートした。

 プリンストン大学(Princeton University)のジュリアン・ゼライザー(Julian Zelizer)教授(政治史)は、ブティジェッジ氏がさらに支持を伸ばせば、すぐさまトランプ氏の攻撃の本格的な対象になるのは間違いないと指摘する。

 ゼライザー氏は、「トランプ氏は脅威を感じたときはいつでも、その脅威を攻撃する。これが激しくなると、観察してから攻撃を解き放つ」と説明した。

■どの角度から?

 どの線から攻撃するか? ブティジェッジ氏の発音しにくい名字だろうか?

 穏健派のブティジェッジ氏は自分の名字に関するジョークを飛ばし、ユーモアのあるやり方で有権者に発音の仕方を覚えてもらおうとしたことがあり、名字を攻撃する作戦の効果は薄い。

 ではブティジェッジ氏が比較的経験が浅いことをからかうだろうか? なんといってもブティジェッジ氏が市長を務めていたのは人口10万人のインディアナ州サウスベンド(South Bend)で、世界一の経済大国米国ではないのだから。

 ブティジェッジ氏は政治経験の不足に対する批判を、アフガニスタンへの従軍経験を挙げることで切り捨てている。「誤字だらけのツイートなんかよりはるかにひどい『飛来物』(銃弾)を見てきた」とコメントし、トランプ氏がソーシャルメディア上で時々やっているスペルミスをやゆした。

 ならばブティジェッジ氏の性的指向を攻撃するか? ブティジェッジ氏は二大政党の指名を勝ち取る可能性がある候補では初めて、同性愛者であることを公表している。

 ゼライザー教授は、「大統領は限度というものを知らない」とした上で、ブティジェッジ氏が同性愛者である点を攻撃すれば「反発を招く可能性がある。もっとも大統領は(共和)党内からの反発を一切受けることなく、こうした限度をしばしば超えているが」と語った。

 バージニア大学(University of Virginia)のラリー・サバト(Larry Sabato)教授(政治学)は、ブティジェッジ氏が民主党の指名を獲得した場合、「彼の同性婚に関する問題は間違いなく攻撃の的になる。しかしそうなったとしても、トランプ氏はそうした汚れ仕事をキリスト教福音派の指導者らに任せばいい」との見解を示した。

 自身が退場させた「クルックド・ヒラリー(悪党ヒラリー)」ことヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官を含め、大勢の政敵がいることを得意がっているトランプ氏にとって、ブティジェッジ氏にふさわしいあだ名をつけられないことは、やがて悩みの種になるかもしれない。

 トランプ氏は昨年、ブティジェッジ氏を風刺雑誌「マッド(Mad)」の表紙を飾っていたマスコットキャラクター、アルフレッド・E・ニューマン(Alfred E. Neuman)になぞらえたが、大失敗に終わった。

 独特の笑顔や突き出た耳で知られるニューマンは、ブティジェッジ氏によく似ていたが、マッドはずっと昔に世間から忘れ去られていた。

 ブティジェッジ氏は、「正直に言えば、(ニューマンについて)グーグル(Google)で検索しなければならなかった」「世代的なものだろう。何のことか分からなかった」とコメントした。(c)AFP/Jerome CARTILLIER