【2月12日 AFP】11月の米大統領選に向けた民主党指名候補争いで、ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(77)の人気下落が止まらない。当初は中道派として候補者争いの先頭に立ち、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏を大統領の座から引きずり下ろして政権奪回を果たすため、党を活気づける存在となるはずだったにもかかわらずだ。

 トランプ氏に勝つ最有力候補だと自称するバイデン氏だが、政治家としての勢いはここ1週間で落ち込んだ。

 バイデン氏は初戦となるアイオワ州の党員集会で4位どまりだったことについて、「腹を殴られた」ようだと表現。11日に行われたニューハンプシャー州の予備選でも中間集計結果で5位に沈んでおり、2戦続けての完敗となった。

 事態の行き詰まりを感じ取り、バイデン氏は夜にニューハンプシャーで選挙結果を見守る予定を急に取りやめ、強力な支持基盤を誇るサウスカロライナ州に移動。サウスカロライナでも今月予備選が予定されており、ここでは多様な人種の民主党員が投票を行う。

 ニューハンプシャー州では西隣バーモント州選出の急進左派バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員が台頭した一方、バイデン氏は厳しい戦いを強いられた。

 さらに年齢がバイデン氏の半分に満たない中道派のピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)氏のほか、現実路線を掲げるエーミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)上院議員、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員にも敗北した。

 民主党候補指名争いの歴史において近年、最初の2州でこれほど振るわない結果でありながら指名獲得までこぎ着けた候補は1人もいない。

 バイデン氏の支持率は全国的に低下傾向にある。モンマス大学(Monmouth University)が11日に発表した世論調査では、アイオワ州の党員集会前に30%だったバイデン氏の支持率が、今週に入ってほぼ半減の16%にまで落ち込んだ。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RealClearPolitics)」がまとめた全国規模での世論調査でも支持率はサンダース氏23%、バイデン氏20.4%となり、ニューハンプシャー大学(University of New Hampshire)のダンテ・スカラ(Dante Scala)教授は「有権者はバイデン氏のことを十分に好んではいるが、献身的な支持ではなかった」と指摘している。

 バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領のサポート役を8年務め、民主党員から大変尊敬を集めてきたバイデン氏だが、驚くほどの衰退ぶりは顕著になっている。

 全国でも特に白人の比率が高いアイオワ州とニューハンプシャー州は指名候補争いの良い指標とならないと訴えるバイデン氏だが、2度の惨敗から立ち直るには相当の忍耐力と集中力が必要だ。

 最初の2州での戦いについてバイデン氏は、レース開始の「合図」に過ぎないと述べ、今後も選挙戦に残る意向を示している。また黒人の有権者を「民主党の最も熱心な支持層」と表現し、投票に参加するよう呼び掛けている。(c)AFP/Michael Mathes