■もはや手遅れ

 ガーメント地区の店舗が閉鎖されると常連客が減り、多くの店舗がファッションデザイナー以外の顧客に切り替えなければならなくなった。現在は主に、ブロードウェー(Broadway)や映画、ネットフリックス(Netflix)やアマゾンプライム(Amazon Prime)などの番組向けに衣装を制作している。提供先には、ガーメント地区の黄金期を舞台にしたドラマ「マーベラス・ミセス・メイゼル(The Marvelous Mrs. Maisel)」も含まれている。

 マンハッタン(Manhattan)のゲイル・ブリュワー(Gale Brewer)区長にとって、数千人規模の高収入の雇用を提供する同地区の存続は避けられない課題となっている。また、ニューヨーク市議会のコーリー・ジョンソン(Corey Johnson)議長は、ガーメント地区は「ニューヨークのファッション経済の要となっており、経済をけん引すると同時に文化的な支えともなっている」と話す。

 一方、ニューヨークのビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長は2018年、地主に対し衣料品メーカーへの場所提供を義務付けていたゾーニング規制を廃止し、ガーメント地区の支援者らを憤慨させた。同市長はまた、ブルックリン(Brooklyn)に多額の資金を投入し、新たな衣料品生産拠点を建設する計画も発表した。

 ブリュワー氏とジョンソン氏はこれに反発し、ニューヨーク市に対し、衣料品メーカーに不動産を貸している所有者の減税を求めた。さらに両氏は、衣料品メーカーと小売業者が入居できる建物を購入するための資金を獲得したが、建物自体はまだ見つけられていない。

 フェラーラさんはもはや手遅れだと嘆く。「計画実行に時間がかかり過ぎた」(c)AFP/Laura BONILLA