米国立衛生研究所の動物福祉軽視 「ショッキング」と研究者ら
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【2月7日 AFP】暖房装置の故障で干からびてしまったり、研究者らが1週間も水や餌をやるのを忘れ、飢えや喉の渇きで死んでしまったりしたマウスたち。誰もそのことに気付かなかった。
あるいは施設管理者が過労に陥り、5か月近くにわたって24時間、電灯をつけっぱなしの部屋で飼育されていた霊長類。
これらは米国民の税金を使って医学や行動科学の研究を行っている米国立衛生研究所(NIH)の実験施設で、2018年1月~2019年10月の22か月の間に起きた動物福祉に関する過失の一部だ。
動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が情報請求によって入手し、AFPとのみ共有した記録によると、同期間に31件のこうした違反が内部調査で明らかになったという。
多くの科学者らは、医学の進歩のために動物研究は不可欠だと考えており、実験は厳格な法律と規制に従って行われることになっている。
米動物福祉協会(Animal Welfare Institute、AWI)の研究員、エリック・クレイマン(Eric Kleiman)氏は「法律や規制は、動物の痛みや苦痛、ストレスを最小化するために存在している。だが最低限の基準さえも守られていなければ、大きな苦痛を伴うことになる」と指摘する。「訓練、獣医医療、餌やり、水やり。これは基本中の基本だ。こうしたことを適切にできないのであれば、動物に関わる仕事をする権利はない」と説明し、NIHの過失発覚は「ショッキング」だと語った。
例えば処置室の温度が低すぎたために使用した電気毛布で、皮膚をやけどしてしまった犬がいた。スタッフが監視を怠ったからだ。また暖房装置が故障し、室温が一晩中38度のままだったためにマウス13匹が干からびて死んでしまったこともある。
2018年7月にはある実験者が、ゼブラフィッシュ15匹に食塩水を注射し、うち4匹が即死した。この措置は認可されていなかった。その3週間後には18匹の魚に同じことが繰り返され、7匹は死んでいるのが見つかり、他の11匹は安楽死が必要となった。
また多くの手術で無菌操作や術後のケアがされていなかったという。その中には霊長類も1例含まれていた。
動物研究を支持する団体「アメリカンズ・フォー・メディカル・プログレス(Americans for Medical Progress、AMP)」のパウラ・クリフォード(Paula Clifford)事務局長は、発覚した動物福祉に関する過失をどのように捉えるかが重要だと語った。
ただし同氏は「NIHの規模と飼育している動物の数の多さを考慮すれば、こうした出来事はかなり珍しく、衛生研究に関わっている無数の動物のほんのわずかな割合にすぎない」とも述べている。
NIHはAFPに対する正式回答で「貴社の指摘する出来事については(NIH傘下の)実験動物福祉局(Office of Laboratory Animal Welfare、OLAW)が徹底的に調査を行った。NIH内の各施設は再発防止のために多くの改革を行ってきた」と述べている。(c)AFP/Issam AHMED