【2月1日 AFP】新婚で妊娠2か月のタイ国籍の工場労働者の女性(32)は現在、世界的な健康危機の震源地に閉じ込められている。この女性のように、中国から必死に脱出しようとしている多数の外国人たちは、米国や日本といった国々が自国民を飛行機で避難させるのをただぼうぜんと見ている。

 今週、中国から各国政府のチャーター便で大勢の人々が東京、シンガポール、米カリフォルニア州へと無事に帰国したが、外交的影響力の少ない国々の人々は自分たちが取り残されるのではないかと不安を抱いている。

 中国政府は、新型コロナウイルスを封じ込めようと、流行の中心地となっている湖北(Hubei)省武漢(Wuhan)とその周辺で移動制限を課し、大勢の人々が事実上、街に閉じ込められている。その中には外国人も多数いる。

 取材に応じたタイ人女性は2週間前に中国にやって来て、仙桃(Xiantao)で中国人男性と結婚した。武漢から約200キロの位置にある同市は現在、レストランや店舗も閉鎖され、まるでゴーストタウンのようだ。

 女性は、「私たちのことなんかどうでもいいと思われているんだと思うと傷つきますよ」とAFPに話し、「私は飢えるか、あるいは感染して死ぬかもしれない」と続けた。おなかの子どもの健康状態を心配し、タイ政府にどうにかして助け出してもらいたいと語った。

 タイ政府は連日、新型肺炎の「中心地」にいることが確認されたタイ国籍を持つ65人を避難させる「許可」が中国から下りるのを待っていると主張し続けている。

 タイ人の男性医学生(23)は、寮の部屋に閉じこもっているが、食べ物と水が減ってきたとAFPに話した。富裕国が自国民を救出するチャーター機を飛ばし始めるのを信じ難い気持ちで見ているという。タイ政府からは、いつになったら避難できるのか、あるいは、避難できるのかどうかすら、何の発表もないからだ。

「中国は他の多くの国々には許可を与えているのに…だから僕たちはものすごく落ち込んでいます」 (c)AFP/Hector RETAMAL / with Dene CHEN in Bangkok