【1月31日 AFP】(図解追加)喫煙者が禁煙すると、たばこによる損傷を受けた細胞の一部と置き換わるための健康な細胞が出現するとの研究結果がこのほど、発表された。研究論文によると、この効果によって肺の内部を喫煙以前の状態に戻すことが可能になるかもしれないという。

 損傷を受けた細胞はがん化しやすいため、喫煙者がたばこをやめることができれば、肺がんなどの疾患発症リスクが低下し、体への新たな損傷を防止できる。これは、これまで長年言われてきたことだ。

 だが、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、禁煙による恩恵はそれだけにとどまらない可能性があるという。喫煙者が禁煙すると、体が健康な細胞の「貯蔵所」を利用し、たばこで損傷した肺の細胞を置き換えている可能性があるというのだ。

 研究について、論文の共同主執筆者で、英遺伝子研究機関ウェルカム・サンガー研究所(Wellcome Sanger Institute)のピーター・キャンベル(Peter Campbell)氏は、禁煙を目指す喫煙者に新たな希望をもたらすものだと話す。

 キャンベル氏は、同研究所の発表資料の中で、「30年、40年、それよりも長くにわたって喫煙を続けてきた人たちは、いまさら禁煙しても遅すぎるし、すでに損傷は起きていると言うことが多い」「今回の研究の非常に興味深い点は、禁煙するのに遅すぎることは決してないのを明らかにしたことだ」と述べている。

 キャンベル氏によれば、今回の研究の対象となった人々の中には、これまでの人生で紙巻きたばこを1万5000箱以上吸った人もいたという。しかし、禁煙してから数年以内で、気道の内側を覆っている細胞の多くは、たばこによる損傷の痕跡が見られないものだったと説明している。

■健康な細胞が出現

 今回の研究では、16人の肺の生体組織検査結果を分析し、がんを引き起こす可能性のある変異を探した。検査対象者には現在の喫煙者、元喫煙者、喫煙経験のない成人と子どもらが含まれていた。

 分析の結果、元喫煙者の肺細胞は最大40%が健康であることが分かった。これは、同年代の喫煙者に比べて4倍の数値だ。

 現時点で重要となるのは、健康な細胞の貯蔵所の位置を特定することと、健康な細胞が損傷した細胞と置き換わるメカニズムを解明することだと、キャンベル氏は指摘した。(c)AFP/Sara HUSSEIN