【1月31日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の弾劾裁判で、トランプ氏の弁護人が大統領には事実上の絶対的権力があると主張したことから、検察役の民主党議員と弁護側との議論が白熱している。

 著名刑事弁護士でハーバード大法科大学院(Harvard Law School)教授のアラン・ダーショウィッツ(Alan Dershowitz)氏は29日、トランプ大統領は自身の再選が公益と信じていたため、トランプ氏の行為は弾劾可能な職権乱用に当たらないとの主張を展開した。

 裁判の争点はトランプ氏が自身のライバルである民主党員ら、特に2020年大統領選で自身の対抗馬となり得るジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領に対する調査を開始するよう、ウクライナに不正な圧力を加えたかどうかということであり、ダーショウィッツ氏の主張は、トランプ氏の罪状の中心に関わるものだ。

 ダーショウィッツ氏は歴史的な弾劾裁判で判決を下すことになる上院議員100人に対し「私が知っている公人は皆、自身の再選が公益だと信じている」と指摘。「大統領が、公益である自身の選挙での当選を後押しすると信じる行動を取る場合、それが弾劾につながる『見返り』とはなり得ない」と主張した。

 この主張は検察役を務める民主党議員らと米法曹界に衝撃を与えた。首席検察官役を務める民主党のアダム・シフ(Adam Schiff)下院議員は、ダーショウィッツ氏の主張を言い換えれば「彼(トランプ氏)にとって良いことは、国家にとって良いことだ。なぜなら、彼が国家だからだ」となると指摘。

 ジョージタウン大学(Georgetown University)法学部のニール・カトヤル(Neal Katyal)教授は「われわれの民主主義にとって、これ以上危険なものは考えられない」とコメント。民主党のタミー・ダックワース(Tammy Duckworth)上院議員はニュース専門局MSNBCに対し「まるで北朝鮮の話をしているようだ」と語った。

 トランプ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領に調査開始を迫る目的で、3億9100万ドル(約426億円)の対ウクライナ軍事支援を保留にし職権乱用の罪などに問われ、昨年12月18日、民主党が過半数を占める下院で弾劾訴追された。ただ陪審役を務める上院議員は共和党が過半数を占めており、トランプ氏は迅速に無罪判決を勝ち取ることを期待している。(c)AFP/Paul HANDLEY