【1月29日 東方新報】中国国家統計局は先日、2019年末時点で国内人口が14億5万人に達し、史上初めて14億人を超えたと発表した。一方で、労働力人口や年間出生数は減り続けており、日本や欧米メディアは「少子高齢化が加速し、中国経済が低迷する恐れがある」と報道している。確かにさまざまな指標がその傾向を指し示しているが、意外に語られていない「盲点」もある。また、中国の少子高齢化は、日本にとって「ビジネスチャンス」を秘めている。

 国家統計局によると、中国の2019年の出生数は前年比58万人減の1465万人で、3年連続の減少となった。中国では2016年から一人っ子政策を廃止し、夫婦一組に2人までの出産を認めるようにしたが、教育費や住居費の高騰、若者の結婚観・家族観の変化から、出生増の起爆剤とならなかった。

 16歳から59歳までの2019年の労働人口は前年比89万人減の8億9640万人。2012年から8年連続減少となった。そして60歳以上の人口は2億5000万人を突破した。2022年からは1962年生まれ以降のベビーブーム世代が退職する。働き盛りの世代が多く、社会保障が必要な高齢人口が少ない「人口ボーナス期」が終わり、労働力が急激に縮小する可能性がある。

 中国政府のシンクタンク、中国社会科学院(Chinese Academy of Social Sciences)世界社会保障研究センターの鄭秉文(Zheng Bingwen)主任は、昨年4月に「年金積立金は2027年の約7兆元(約111兆円)をピークに急減し、2035年に底を突く」という推計を公表し、国内で波紋を広げた。

 これまで一人っ子政策を推進していた国家衛生健康委員会(旧国家衛生・計画出産委員会、NHC)幹部も、講演で「60歳以上の人口は2050年に全体の35%にあたる4億8700万人に達し、国内総生産(GDP)の26%を介護や医療に充てる必要がある」と予測した。

 さらに中国の名門大学・北京大の蘇剣(Su Jian)教授が「人口データが水増しされている疑いがあり、人口は2018年から既に減少を始めている」という分析をまとめたことを、昨年10月に中国メディアが報道しており、その指摘が事実であれば、事態はより深刻だ。

 中国国内でもこうした指摘があることから、日本や欧米では今後の中国経済への悲観論が目立つ。ただ、ここであまり語られていないのが「中国の定年」だ。

 中国の労働契約法では、男性の定年は60歳、女性は50歳(幹部、専門職などは55歳)と定められている。「女性の定年50歳は早いにしても、男性が60歳というのは日本と同じじゃないか」と思うだろうが、今の日本では60歳で仕事を辞めて悠々自適な生活を送る人は少ない。企業には65歳までの再雇用が義務付けられ、大半のサラリーマンが仕事を続けている。