【1月26日 AFP】欧州のユダヤ系財閥ロスチャイルド(Rothschild)家の子孫が、オーストリアのウィーン市が同家の公益信託基金を不法占有し、ナチス・ドイツ(Nazi)時代の法令を「持続させている」として、同市を相手取って訴訟を起こした。複数メディアが25日に伝えた。

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 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、今回の訴訟は長い間忘れられていた、精神的支援を提供する公益信託をめぐるもので、ナチス体制下の被害者子孫による返還要求としては最大規模だという。

 オーストリアの大衆紙クリア(Kurier)や週刊誌プロフィル(Profil)も、FTと同様の内容を掲載。審問はウィーン地裁で来月20日に開かれる。

 報道によると、ナサニエル・マイアー・フォン・ロートシルト(Nathaniel Meyer Freiherr von Rothschild)男爵の弟の末裔(まつえい)、ジェフリー・ホーゲ(Geoffrey Hoguet)氏の代理人は訴状で、ウィーン市が「ナチスの没収命令がまだ存在しているかのように振る舞っている」と主張している。

 同男爵は独フランクフルトで始まったロスチャイルド家のオーストリア分家の一員で、1905年の死去時に、精神的支援を提供することを目的に約1億ユーロ(約120億円)相当を残していった。

 同男爵の名前で基金が設立され、当初は同男爵一家が率いる委員会が管理に当たり、後に2か所の療養所を運営。1912年に開設された1か所は、現在も神経学関連の施設として運営されている。

 ナチス・ドイツは1938年にオーストリアを併合すると、同年にロスチャイルド家を追放し、翌年には同基金を解散させた。

 第2次世界大戦(World War II)後の56年に同基金は再設立されたものの、管理は従来の委員会ではなくウィーン市が担うことになった。

 ホーゲ氏は、独立した管理委員会を再び設置するべきだと主張しており、ウィーン市が設立者の遺志に反して同基金を不法占有していると非難している。(c)AFP