【3月15日 AFP】アフガニスタン・バーミヤン(Bamiyan)州にある古代遺跡群は、これまでイスラム過激派の攻撃や盗難の被害に遭ってきた。だが今、これまで以上に手ごわい敵に直面している──気候変動だ。

 ヒンドゥークシュ(Hindu Kush)山脈に位置するバーミヤン渓谷の大仏は2001年、アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)によって破壊されたが、その周りの多数の洞窟(どうくつ)や僧院、壁画はまだ残っている。また、バーミヤン渓谷にはシルクロード時代に造られたシャーリゴルゴラ(Shahr-e Gholghola)要塞(ようさい)やシャーレゾアーク(Shar-e Zohak)とりでの跡も存在する。

 専門家によると、乾期と激しい雨の繰り返しという気候パターンと春の雪解け水の量が増えていることが、遺跡群崩壊危機の原因となっているという。

 アフガニスタン当局は国連(UN)の2016年の報告書で、遺跡群は気候変動に直接結びついた気象条件が原因で、「崩壊と深刻な浸食の恐れがある」と警告した。

 アフガニスタンで活動する仏考古代表団(French Archaeological Delegation)のフィリップ・マルキ(Philippe Marquis)団長はAFPに対し、「浸食が加速している。雨で破壊が進み、風も浸食を促進する」と語った。この地域で数十年にわたり調査や発掘を行っているマルキ氏は、アフガニスタンは特に森林破壊により植物が減少しており、「地質学的に非常に脆弱(ぜいじゃく)だ」と説明した。

 代表団の活動に賛同する画像サービス会社イコネム(Iconem)も、シャーレゾアークは過去30年に大幅に進んだ浸食により「非常にもろくなっている」と話す。

 バーミヤン北部に住む男性(21)は、気候変動は地元住民にとっては長い間直面してきた現実だと話す。「天気が変化している。夏はこれまでよりも暑く、冬は寒くなった」と話す。

 バーミヤンの遺跡群の大半は、この地にイスラム教が入ってくる前から存在していた。今の住民は仏教徒ではないが、住民らはこの地の歴史を誇りにしている。

 浸食や気候変動の影響を軽減するには多額の資金が必要だが、内戦で荒廃したこの国にとって、そのような金額を工面することは難しい。

 米ノートルダム大学(University of Norte Dame)の気候変動適応イニシアチブ(Global Adaptation Initiative)は現在、気候変動に対する脆弱性と適応能力においてアフガニスタンを181か国中173位と位置づけている。(c)AFP/Pierre CELERIER