■「困難な状況にある人を受け入れるノウハウ」

 ミシェル・ヌーベル(Michel Nouvel)村長(62)によると、難民希望者の支援を行うNGO「フランス・テール・ダジル(France Territory for Asylum)」が運営する受け入れ施設は、「乳製品工場の閉鎖によって村が経済的打撃を受けた時に」開設された。

 村にはそれ以前から、社会から脱落した若者のための職業訓練所があり、80人を受け入れていた。「困難な状況にある人を受け入れるノウハウがあり、それを生かしたかった」「受け入れ施設は約50人収容できる。おかげで学校は存続でき、郵便局、薬局、医者も仕事を続けられる」とヌーベル村長は話す。村は公共の宿泊施設をNGOに貸し出しており、年約2万ユーロ(約240万円)の収入を得ている。

 フランスはドイツと共に、欧州連合(EU)において難民希望者の大半を受け入れている。EU統計局(Eurostat、ユーロスタット)によると、2018年の初回の申請数は11万500件に上ったという。

 難民希望者を大量に受け入れたため、フランス国内では収容施設が不足し、多くの希望者が非公式なテント生活を送ることになった。特にパリ周辺に集中しているという。

■「世界の果て」

 シャンボンルシャトーから最寄りの街までは30キロ離れている。14世紀のとりでと教会、噴水があるこの村の時間はゆっくり流れている。

 ギニア出身のジュニアさんは、「ここは世界の果てだ」と話す。周りにいた20人ほどの友人たちもその言葉にうなずいた。ジュニアさんらは安全上の理由から名前を変えた。

 ヌーベル村長は、難民希望者らが何もせずにぶらついている様子を見て、一部の村人は不満を漏らしていると明かした。だが、難民希望者の審査中の就労は認められていないと強調した。

 この受け入れ制度は2003年に開始したが、これまでに許可が下りた住民で村にとどまることを選んだのはマダガスカル出身の一家族しかいなかった。その他の難民希望者らは、人里離れていることを理由に村を去った。

 シャンボンルシャトーの施設で暮らす難民希望者のうち、2018年に当局から申請が認められた人は24%にとどまっている。 (c)AFP/Isabelle LIGNER