【3月18日 AFP】資金難、汚職疑惑、内輪もめ、ぼろぼろの施設──ロシアの首都モスクワ南部にある小児がん病院にできた亀裂が、同国の公的医療制度の問題を浮き彫りにしている。

 1970年代に造られたブルータリズム建築の建物に入居する悪名高いブロヒン(Blokhin)がんセンターは、ナチス・ドイツ(Nazi)のブーヘンバルト(Buchenwald)強制収容所になぞらえて「ブロヒンバルト」とも呼ばれている。

 ブロヒンの元小児科副部長マクシム・ルイコフ(Maxim Rykov)氏はAFPに対し、「子どものがん患者はゾッとする環境で治療を受けていた。換気装置はなく、壁にはかびが生え、部屋には大勢が押し込められていた」と語った。

 ルイコフ氏と同僚20人は昨年9月、新経営者の管理が不適切だと非難し、ロシア最大のがん専門病院と自称するブロヒンを退職した。

 保健省は調査の結果、病院に問題はなかったと判断した。だが、患者の家族にとってルイコフ氏ら医師の告発は驚きではなかった。

 5歳の娘が白血病の治療のため1年間ブロヒンに入院していたという女性は「換気ダクトは何年も清掃されていなかったため、換気口をふさがなければならなかった」と話した。

 AFPはブロヒンに取材を申し込んだが断られた。

 退職したがん専門医らは、昨年6月に就任した新経営陣は、経費節減のため医師の給与を35%減らし、治療方法も変更したと主張している。一方、報道を受け調査に乗り出した保健省は、骨髄移植の資金をめぐり不透明な方法で私腹を肥やしていたとして医師らを非難した。

 AFPはブロヒンの経営陣にコメントを求めたが、対立は「解決済み」だとして回答は得られなかった。