■1頭約880万円の値が付くゾウも

 ゾウはかつてタイの木材産業の労働力を担っていたが、約30年前から徐々に仕事がなくなり、ゾウ使いは失業した。

 仕事を失ったゾウ使いは活況を呈する観光産業に活路を求め、観光客を乗せ、曲芸を披露する遊園地などで働き始めた。

 飼いならされたゾウは、最高8万ドル(約880万円)の値が付く。巨額の資金を投じて購入した業者は、元を取るためゾウに長時間におよぶつらい仕事をさせる。最近では一風変わった芸を教え込むことも増えている。

 タイ北部チェンマイ(Chiang Mai)のメーテーン(Mae Taeng)公園には、1日約5000人が訪れる。入場料は1人当たり約50ドル(約5500円)だ。

 鼻で筆を持ち、日本風の風景画を描くゾウ「スダー」を目当てにこの公園を訪れる人も多い。スダーの描いた絵は最高150ドル(約1万6000円)で販売されている。この公園では、ゾウに乗って丘を散策することもできる。

■エシカルツーリズム?

 動物保護団体「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP)」によると、タイ全土で把握されているエレファントパークは220か所あるが、倫理的な観光をうたっている場所でさえも「真に満足できる飼育環境を整備しているところは10か所程度にすぎない」という。

 タイには「家畜化された」ゾウが4000頭近くいる。ゾウを自然に戻すよう訴えるNGOもあるが、タイ政府はゾウが生息できる場所がなく、人間と衝突する恐れもあるとして消極的だ。

 妥協案として、業界全体の規制を強化し、飼育基準の引き上げを求める声も一部から出ているが、昨年の観光客数が3800万人以上に上るタイでは観光産業に干渉するような厳格な法律を制定することは難しい。

 WAPのヤン・シュミットブルバッハ(Jan Schmidt-Burbach)氏はAFPに、前回2015年の調査では、約1771頭のゾウが疑わしい環境で飼育されていたと指摘した。2010年の調査に比べ357頭増えているという。(c)AFP/Sophie DEVILLER and Jonathan KLEIN