■「薬物中毒とは言いたくないが…」

 治療では、体外式模型人工肺(ECMO)が最終手段として使われた。患者の体内から血液を抜き取り、酸素化して血管に再注入するための機械だ。

 ロドリゲスさんは3日間、意図的に昏睡(こんすい)状態に置かれた。治療中に苦しい思いをしないための配慮だ。そしてECMOが機能している間に両肺とも回復し、一命を取り留めることができた。肺移植の必要もなくなった。

 ロドリゲスさんの入院期間はわずか12日だった。同様の症状で入院した他の患者に比べるとその期間は比較的短い。だが、状態としては最も深刻な例の一つだった。入院先のロングアイランド・ユダヤ人医療センター(Long Island Jewish Medical Center)では、同程度に深刻な患者は40人中5人しかいないという。

 米国では昨年11月までに、電子たばこの利用に関連して47人が死亡している。また電子たばこに関係する疾患は、世界で2290例報告されている。

 電子たばこの使用に関連した肺疾患が広がっている問題について米当局は昨年11月、THCのリキッドに含まれる添加物の一つ「ビタミンEアセテート」が原因だと発表している。

 また国連(UN)の世界保健機関(WHO)は今週、電子たばこが使用者だけでなく、電子たばこから出る蒸気にさらされる第三者にも害を及ぼすとの見解を示している。電子たばこが喫煙者の禁煙を助けると主張するのに十分な証拠はないが、その利用が安全でないことを示す明らかな証拠はあるとの考えを報告書にまとめた。

 退院から2か月がたち、ロドリゲスさんは慢性的な呼吸困難からは解放された。だが、担当医によると肺活量は基準値の60%ほどに低下していたという。

 本人は、「身体的には問題ないように感じるが、精神的に回復するまでにはしばらくかかりそうだ」と語り、現在はマリフアナに対する欲求があって「薬物中毒とは言いたくないが、そのことを考えてしまう日もある」と打ち明けた。