【1月10日 AFP】イランで9日、同国女子選手として初の五輪メダリストとなったキミア・アリザデ(Kimia Alizadeh)が、オランダへの定住を望んでいるとして懸念の声が上がった。

 2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪で、当時18歳のアリザデはテコンドー女子57キロ級の銅メダリストとなり、イランではハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領をはじめ保守派からも称賛を受けた。試合では厳しいイスラム教の慣習に従い、テコンドーのユニホームを着用しながら防具の下にはヘッドスカーフを巻いていた。

 アリザデは今年の東京五輪に出場して再び母国にメダルをもたらすことを大いに期待されているが、実現しなさそうな様相を呈している。

 イラン学生通信(ISNA)は同日、「イランのテコンドー界に衝撃。キミア・アリザデがオランダに移住した」と報道。この記事では、女子代表チームのコーチの話としてアリザデが負傷していることが伝えられた。同選手は東京五輪を控えた代表選考会にも現れなかったという。

 ほかの複数メディアでも、現在オランダでトレーニングしているとみられるアリザデが、東京五輪への出場を望んでいる一方で、それはイラン国旗の下ではないと報じられた。

 インターネットに投稿された不鮮明な画像では、アリザデとみられる女性がヘッドスカーフを着けずに若い男女のグループと一緒にいる様子が確認され、数万件のコメントが集まる事態となった。また、ペルシャ語のツイッター(Twitter)では同日、ハッシュタグ「#Kimia_Alizadeh」がトレンドに入っていた。

 そうした中でイラン国会議員の一人は、イランの「宝を逃がした」として関係者を「無能」と批判し、今回の経緯について説明を求めた。

 アリザデがイラン代表として東京五輪に出場しなければ、柔道と並んでテコンドーが強い同国にとっては大きな打撃になるとみられる。(c)AFP