【1月4日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の命令で米軍がイラン革命防衛隊(IRGC)の対外工作を担う精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官を殺害した件をめぐり、米政界の深刻な分断が露呈した。共和党議員らはトランプ氏を支持しているが、民主党議員らはソレイマニ司令官殺害は壊滅的な軍事衝突の引き金になりかねないと批判している。

 米軍が国外で実施する重要な軍事作戦は超党派の支持を得ることが多く、2011年に特殊部隊がパキスタンで国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の創設者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を殺害したときもそうだった。

 しかし近年では、こうした超党派の合意にほころびが生じ、イラクの首都バグダッドで3日に起きたソレイマニ司令官殺害は、米政界の亀裂を浮き彫りにした。

 従来、重要な軍事行動の前には、ホワイトハウス(White House)が両院の指導部に通告するのが慣例となっている。トランプ氏に近い共和党のリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は、今週フロリダ州にあるトランプ氏の別荘を訪ねた際、軍事作戦を実施する可能性があると知らされていたと語っている。

 だが、民主党議員とその側近によると、トランプ氏を厳しく批判している民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長とチャールズ・シューマー(Charles Schumer)上院院内総務ら指導部には、このたびの軍事行動は伏せられていたという。

 グラム氏は米FOXニュース(Fox News)に対し、今回の軍事行動は、「ソレイマニ司令官が計画と遂行を担当して今後起きるはずだった攻撃を止めるための自衛攻撃だ」と主張。共和党の議会下院トップ、ケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)院内総務も、今回の攻撃は「(わが国の)決意と力の表れ」だと評価した。

 一方、ペロシ氏は、ソレイマニ司令官殺害により「暴力が危険なまでに激化する」恐れがあると指摘。シューマー氏も、トランプ氏は「わが国を新たに終わりのない戦争に引きずり込む恐れがある」と批判している。

 米大統領選に向けて民主党の候補指名獲得を目指す面々もこの論争に参戦し、先陣を切ったジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領は、「(トランプ氏は)一触即発の地域にダイナマイトを1本投げ入れた」と非難した。

 共和党議員のほとんどはトランプ氏を支持しているが、穏健派の一部議員らは民主党議員と共に、トランプ政権に詳細な説明を求め、今後の行動については議会で協議するよう要求している。(c)AFP