【12月30日 AFP】止まることなく発展する現代のタイの首都バンコクで、剣や戦士たち、そして伝説の舞台となる古代の世界が、ごう音をとどろかせながら暗い路地で躍動し、喧騒(けんそう)からのつかぬ間の逃避を与えてくれる。

 中国の伝統的な演劇である京劇の一座は舞台上で、激しく打ち鳴らされる銅鑼(どら)や笛の音に合わせて、忠義や誠実、家族を中心とした劇的な物語を紡ぎ出す。

 人口の14%を華人が占めるタイでは、何世紀にもわたってこのような一座がタイ各地を巡業してきた。

 だが今やスマートフォンや映画、ネットフリックス(Netflix)の時代となり、京劇の公演は減少。高層ビル街や巨大なショッピングセンターが立ち並ぶ都市では、消えゆく芸術となっている。

 一座の衣装デザイナーの一人は、「タイの京劇では、集客とパフォーマンスのどちらの点でも急激な落ちこみがみられる」と話す。

 この一座が地方公演を行う際、客のほとんどは高齢の華人だが、バンコクでは観光客と地元住民が交ざりあう。

 タイに今なお残る20ほどの京劇団と同じく、この劇団も数十年間にわたって活動を続け、通常は依頼公演をこなす。

 今月28日には、バンコクを流れるチャオプラヤ(Chao Phraya)川の西岸で、かつての王タクシン(Taksin)を祝賀する祭りに出演。

 タクシンは18世紀後半に君臨した王で、中国とタイの双方にルーツを持つとされている。(c)AFP