【12月13日 AFP】アフリカ南部がここ数十年で最悪の干ばつに見舞われるなか、ジンバブエとザンビアの国境に位置する「ビクトリアの滝(Victoria Falls)」が干上がりつつあると多くのメディアが報道し、不安が広がっている。

 この騒動のきっかけとなったのは、ユーチューブ(YouTube)に投稿された動画だ。動画にはザンビアのリビングストン(Livingstone)から見たビクトリアの滝の長く続く断崖の地肌がむき出しになっている様子や、雨乞いをしているという女性の姿が捉えられていた。

 しかし、この動画とその後のメディアの報道は例年水流に影響を与えている乾期についてきちんと伝えておらず、滝の水流はジンバブエ側の方がずっと多いという事実もないがしろにしている。

■ビクトリアの滝は干上がっていない

 動画の視聴回数は9月に投稿されて以来、4万回以上に上っている。だがソーシャルメディアでは一部の人が画像などを証拠に、干ばつは事実であるものの動画で示されたビクトリアの滝の様子は誇張されたもので、現状を表していないと反論している。

 実際、滝の水量は決まって季節的な降雨の影響を受けており、また動画が投稿された9月以降は改善の兆候も現れている。

 ビクトリアの滝とつながっているザンベジ川(Zambezi River)を管轄する当局は、同河川の主要中継点であるビクトリアの滝で水流量を毎日測定し発表しており、それによると水流量が最も少なかったのは1995年から1996年にかけての期間だった。

 今年11月の水流量は1995年以降最低の水準だったが、調査対象の週間に当たる12月2日は測定値が上昇し、毎秒227立方メートルを記録。これは前年同日の測定値である毎秒220立方メートルをやや上回るものだ。

 旅行会社アフリカ・コンサベーション・トラベル(Africa Conservation Travel)の共同創業者であるシェリー・コックス(Shelley Cox)氏は今月4日、AFPに滝の水が流れていることを示すため、メッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」のビデオ通話を使ってビクトリアの滝の生中継を行った。

 コックス氏は「報道の一部、また多くの画像や動画はザンビアに最も近いイースタン・カタラクト(Eastern Cataract)側しか示していない」と指摘し、「それがビクトリアの滝全体の様子であるという認識を与えてしまっている」と述べた。

 観光業界団体のアフリカン・トラベル・アンド・ツーリズム・オーソリティー(African Travel and Tourism Authority)によると、ザンビア側の水流量が減少するのは主に滝の地形のせいで、ジンバブエ側の方が低いからだ。

■気候変動?

 ザンビア気象庁の過去40年にわたるデータを基に昨年発表された南アフリカのある研究によると、リビングストンでは「統計的に有意な気温変化」があったものの、「年間平均降雨量には統計的に有意な変化はなかった」という。

 その一方、研究共著者でバール工科大学(Vaal University of Technology)の研究者であるカイタノ・デュベ(Kaitano Dube)氏は、滝が干上がるのか、またそれがいつなのかを知るのは困難だとし、「動向を見れば水位はますます低くなっており、干ばつはさらに過酷になっているのは確かだ」と述べている。(c)AFP/Tendai DUBE / Brett HORNER