【12月20日 東方新報】麻婆豆腐、回鍋肉(ホイコーロー)、担々麺、青椒肉絲(チンジャオロース)、棒々鶏(バンバンジー)――。日本でもおなじみのこれらの中華料理は、中国・四川(Sichuan)地方が発祥で、中国では「川菜(Chuancai)」と呼ばれている。四川省成都市(Chengdu)で今月上旬、四川料理を海外に広めることを目的とした「川菜対外交流促進協会」が発足。福建(Fujian)料理や広東(Guangdong)料理などに負けじと世界に四川料理をアピールしようとしている。

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 四川料理は、一般的には唐辛子や花椒(ホアジャオ)などの香辛料を使い、しびれるような辛さを意味する「麻辣(マーラー)」味が特徴。

 今ではポピュラーとなった四川料理だが、海外進出の歴史において、他の地域の料理に出遅れていた。中国から海外に移住した華僑は、南部沿岸をルーツとする人が多く、それに伴いふるさとの味・広東料理や福建料理が広まった。日本でも福建料理、広東料理が先に広まり、次いで地理的な近さで東北料理や上海料理が増えていった。

 日本ではその後、回鍋肉にキャベツを入れたり担々麺に汁を加えたりして、日本人好みに改良しながら浸透していった。知名度や人気度は他の地域の料理に劣らなくなったが、それでも中華街などで「歴史のある名店」というと四川以外の料理が多い。

 中国国内でも四川の麻辣料理は今や大人気で、大都市では「川菜」「重慶火鍋」という看板を多く見る。それだけに海外では他の地域の後塵(こうじん)を拝する状況を打破したい思いが強い。

 川菜対外交流促進協会は、四川省人民対外友好協会が主管しており、官民挙げての組織だ。「四川料理走出去(海外進出)3か年(2018~2020年)行動計画」を立て、「グローバルビジネスを学び、国際博覧会に積極的に出展する」などのプロジェクトを通じて、四川料理の魅力を世界に広め、ブランド力を高めようとしている。

 川菜対外交流促進協会の麦建玲(Mai Jianling)首席会長は「四川省はこれまでにサンフランシスコ、ロサンゼルス、モスクワ、ウィーンの4か所に四川料理普及センターを設立した。四川料理の企業50社以上が海外に100店近い支店を出し、米国、英国、日本、オーストラリアなど20か国に進出している」と強調した。

 3か年計画にある名称「走去出」とは、中国政府が掲げるスローガンだ。もともとは海外に積極的投資を図るという意味だが、最近は輸出の増大や企業の進出など中国経済の海外進出全般を指すようになった。世界に影響力を拡大する中国経済の波に乗って、四川料理が世界の人々を「しびれさせる」ことができるか注目される。(c)東方新報/AFPBB News