【12月12日 AFP】世界中の国々がごみの削減に苦闘する中、人工太陽灯を用いてプラスチックを有用な化学物質に変えることのできる、環境配慮型の手法を考案したとの研究結果が11日、発表された。できる化学物質は「ギ酸」で、エネルギー生産に役立つとされている。

 世界を見渡すと、大量のプラスチックごみが山のように積み上げられたり、海中に投棄されたりしている。特にアジア諸国はこの問題に対処できていないとの批判に直面している。

 シンガポールの研究チームは今回、安価で環境を損なわない触媒を用いてプラスチックを「ギ酸」に変換することに成功したと発表した。生成されたギ酸は発電所での発電に利用できるという。

 シンガポール・南洋理工大学(NTU)のチームは研究室での実験で、プラスチックと触媒となる化合物を混合して溶液を作り、この溶液に太陽灯の光を照射して分解反応を生じさせることができた。実験では、プラスチックは6日間で分解された。研究チームは将来的に、このプロセスを本物の太陽光の下で実行できるようにすることを目指している。

 2年間に及ぶ研究プロジェクトを率いたNTUのスー・ハンセン(Soo Han Sen)氏は、「今回の研究は、海洋汚染を引き起こしているプラスチックを、有用な化学物質に変えることを可能にしている」と述べる。

「この手法をカーボンニュートラル(炭素排出量実質ゼロの状態)の完全な再生可能プロセスにしたいと考えている」

 プラスチック再生利用のその他の方法では通常、化石燃料を用いてプラスチックを溶解する必要がある。化石燃料は気候を損なう温室効果ガスを生成する。

 だがこれまでのところ、ギ酸に変換できたプラスチックはごく少量にとどまっており、さらに規模を拡大してこのプロセスを再現するには大きな課題があることを、スー氏は認めている。

 研究を進展させるには、さらなる人的資源と資金が必要となる。またこれまでのところ、対象となっているのは純粋なプラスチックのみで、プラスチックごみを用いた実験は行われていない。(c)AFP