【12月13日 AFP】麻薬がらみの殺人が横行しているメキシコで11月22日、AFPは日々起きる残虐な犯罪を24時間記録するため、全土にフォトジャーナリストとビデオジャーナリストを配置した。メキシコでは、麻薬カルテル根絶のため2006年に政府が軍を動員して以来、25万人以上が殺害されている。過酷な状況の中で取材を行ったジャーナリストらの感想をここに記す。

■他人の苦しみが自分の苦しみに

 かつて「世界の殺人の首都」と呼ばれたシウダフアレス(Ciudad Juarez)は、フォトジャーナリストのエリカ・マルティネス(Herika Martinez)記者(36)の地元だ。「私の写真は、娘を亡くした母親たちや殺人事件の被害者たち、暴力が横行し人がいなくなった街などを捉えている」

 麻薬カルテルによる縄張り争いや麻薬捜査などでは、いつ、誰が死んでもおかしくない。時には、罪のない一般市民が銃撃戦に巻き込まれることもある。

「シウダフアレスでフォトジャーナリストをしていると、常に死や苦しみが間近にある。涙や銃弾、血などを見て他人の苦しみを追体験することになるのだが、その苦しみが徐々に自分自身のものになる」

■暴力は見過ごせない、でも写真見てつらくなる時も

 ペドロ・パルド(Pedro Pardo)記者(44)は、本当は「レッドページ」など担当したくなかったと話す。レッドページとは、その日起きた暴力関連の記事のことで、メキシコの新聞ではほぼ毎日掲載される。

 しかし、「フォトジャーナリストとして暴力を見過ごすことはできない。それを伝える責任がある」。現在はメキシコ市を拠点としているパルド記者は言い、「自分が撮影した写真を見てつらくなる時がある。人間だから」と明かした。

■社会の中心部まで浸透した暴力をカメラで証言

 ラシド・フリアス(Rashide Frias)記者(35)は、シナロア(Sinaloa)州の州都クリアカン(Culiacan)に住んでいる。シナロアは、麻薬王「エル・チャポ(El Chapo)」ことホアキン・グスマン(Joaquin Guzman)受刑者の拠点だ。

 フリアス記者が今回のプロジェクトで撮影した写真の中には、男性の遺体を写したものもある。夜間、照明を当てられた小型車の運転席には男性の青白い顔が浮かび上がっていた。「こういった事象がメキシコ社会の中心部まで浸透しているさまを、カメラを使って証言した」、「メキシコではいつ、どこででも死が感じられる」