【12月9日 AFP】過激なことで知られるロシアのサポーターが、警察の横暴への抗議の中で、クラブの垣根を超えた異例の団結を示している。週末のプレミアリーグの試合では、各クラブのサポーターが試合終了を待たずにスタジアムを後にするという抗議を行った。

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 今回の抗議は、前週末のFCゼニト(FC Zenit)対スパルタク・モスクワ(Spartak Moscow)の試合前にアウェーのスパルタクサポーター150~200人が逮捕されたことを受けて敢行されたもので、同クラブ最大のサポーター団体の呼びかけに応じたファンが試合開始30分で席を離れた。

 他会場でも、各クラブのファンが一斉に追随。ゼニトのセルゲイ・セマク(Sergei Semak)監督もボイコットを支持し、「当局との建設的な対話を呼びかける行動だ」と話している。

 ゼニトとスパルタクのサポーターは険悪な仲で知られ、前節は乱闘の恐れがあるという見方もあったが、現時点で暴力事件は報告されておらず、スパルタクのサポーター団体「フラトリア(Fratria)」は「なんの説明もない強引な逮捕だった」と警察を非難している。

 国内通信社のRスポーツ(R-Sport)は、「警察がバーや通りで人を捕まえている。モスクワの人間がフーリガン行為の疑いで逮捕され、警察署に連行された」という目撃者の言葉を紹介している。また、他のスパルタクのサポーターグループのリーダーは身柄を拘束され、ゼニトのロシア代表FWアルテム・ジュバ(Artem Dzyuba)への侮辱で18か月のスタジアム入場禁止を科された。

 ロシアでは、1990年代には街中でサポーター同士の乱闘が起こることもあったが、近年は当局がこの問題に本腰を入れて対処してきたこともあって、そうした事件は激減し、あったとしても人けのない場所での小競り合いにとどまっていた。

 しかし、その中でも当局による締め付けは強まるばかりで、スパルタクと同じモスクワをホームとするCSKAモスクワ(CSKA Moscow)のサポーターは「W杯(2018 World Cup)が開催されて以来、上からの圧力は強まる一方だ。どんどんとゆがんだ強引なやり方を取るようになっている」と話している。

 フラトリアのあるメンバーは、AFPに対して「(ゼニト対スパルタク戦の行われた)サンクトペテルブルク(St. Petersburg)の件は極端だったが、あれ以前にもいろいろなチームの無数のサポーターが、警察関係者のわけの分からない行動の犠牲になっている」と話した。(c)AFP