【12月7日 AFP】米国のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長(民主)は5日、下院司法委員会(House Judiciary Committee)に対し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対する弾劾条項(弾劾訴追状)の起草を指示した。

 トランプ氏は、ロシアと敵対するウクライナに対し、4億ドル(約430億円)の軍事援助とウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領のホワイトハウス(White House)訪問実現と引き換えに、2020年米大統領選の民主党指名候補として有力視されている政敵ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領に対する捜査の開始を要求した疑いが持たれている。

 民主党は年内に下院で弾劾条項の採決を行うとみられ、トランプ氏は来年1月に共和党が多数を占める上院で弾劾裁判にかけられる可能性がある。以下に、弾劾手続きが今後どう進むかを解説する。

■弾劾条項

 下院司法委員会は4日、同委員会初の公聴会を実施。著名な憲法学者4人が証言し、うち3人がトランプ氏の行動は弾劾訴追の根拠になるとの見解を示した。来週にはさらなる公聴会が予定されている。

 下院司法委員会による公聴会は、事実調査に焦点を置いた下院情報特別委員会(House Intelligence Committee)での最初の公聴会とは異なり、トランプ氏とその弁護団も参加が可能で、証拠の提出や検証、証人尋問などができる。

 ただ、パット・シポローニ(Pat Cipollone)大統領顧問は公聴会への招待を拒否。調査は「根拠に欠き、非常に党派的」であり、「基本的公正性」に欠いていると批判した。シポローニ氏は今後の公聴会に参加する権利を留保している。

 公聴会ではトランプ氏が問われる罪状が検討される予定で、さらなる証人が召喚される可能性がある。下院司法委員会は一連の公聴会を終えた後、刑事事件の起訴状に相当する弾劾条項の採決を行う。

 合衆国憲法では、弾劾訴追に値する罪は「反逆罪、収賄罪などの重大な犯罪または軽罪」と広く定義されている。トランプ大統領は贈収賄、職権乱用、議会妨害、司法妨害の罪に問われる可能性がある。

■下院で弾劾訴追を採決

 弾劾条項は司法委員会で可決された後、下院本会議で採決にかけられる。

 下院での審議は長丁場となる可能性がある。1988年のビル・クリントン(Bill Clinton)前大統領に対する弾劾手続きでは、審議は2日間続き、計13時間以上に及んだ。

 弾劾条項の可決には、下院の単純過半数の賛成が必要。可決されれば、大統領は「弾劾訴追」されたことになる。

 下院では全435議席のうち民主党が233議席、共和党が197議席を確保している。民主党は足並みが統一されており、弾劾条項は可決される見通しだ。