■没落の日々

 だが、すべては過ぎ去った時代の話だ。

 マリでは、北部のイスラム原理主義勢力による戦闘に端を発した破滅的な紛争がここ10年続いており、その影響は周辺国にまで及んでいる。バマコも何度も攻撃を受けた。

 さらに他の地域と同様、鉄道輸送は道路輸送に取って代わられた。収入は落ち込み、マリとセネガルはもはや大切な鉄道を維持するための費用を捻出できなくなってしまった。2003年、鉄道は民営化された。カナダ、米国、フランスが再建に乗り出したがうまくいかなかった。ついに2015年、マリとセネガルは2か国共同で運営することにした。

 運営会社「ダカール・バマコ鉄道(Dakar-Bamako Ferroviaire)」は、今も厳密に言えば従業員428人を雇用している。だが、給料はここ10か月支払われていない。

 コンピューターも明かりもない格納庫で、ムーサ・トラオレ(Moussa Traore)さんは、ほこりだらけの箱に埋もれながら仕事をしている。電気は数年前から止められている。トラオレさんは鉄道の公式記録を担当しており、14トンにも上る写真や資料を管理している。

 トラオレさんは「この鉄道は国の記憶だ。運行(当時の様子)や経済的価値、歴史的文化的価値を私たちは忘れてはならない」と語った。(c)AFP/Amaury HAUCHARD