「私は無比」 闘い続ける米作家ジェイムズ・エルロイ
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■「私は無比」
「This Storm」は「新・暗黒のLA四部作」の第2部で、「アンダーワールドUSA三部作」と合わせると、同氏の故郷の町と国の歴史を31年にわたり語っていることになる。
エルロイ氏は既に新・暗黒のLA四部作の第3部の執筆に取り掛かっている。「私は71歳で健康だ。(この後に)『新・アンダーワールドUSA三部作』を書けるかどうかだ。年を取るからな」
エルロイ氏は当初、犯罪小説作家として名を成した。以前は歯切れの良い文体が特徴だったが、今では豊潤で過剰な語り口で人間のありようを描写している。同氏の作品が文学界で独自の地位を確立していることは疑いない。
「私は犯罪小説を歴史小説および政治小説と合体させた。これが私の偉業と言えるかもしれない」
「私は新ジャンルを創造した。後にも先にも誰もいない…私は無比だ。そういう人間はたまに出てくるものだ」「私は本当に、誰からも影響を受けなかった。誰も私のやっていることをこれからもやることはないだろう」
■過去に生きる
エルロイ氏は、過去に生きていることを誇らしげに認める。
同時代の作家の作品は読まない。その代わりダシール・ハメット(Dashiell Hammett)やレイモンド・チャンドラー(Raymond Chandler)の黄金時代の犯罪小説にこだわっている。
「私は現代を無視しているが、無視するのは簡単だ。なぜならコンピューターを持っていないからだ。手で執筆するし、テレビもボクシング以外はめったに見ない」
「私はずっと過去の歴史的ロサンゼルスに生きている。1950年代半ばに子どもだったときも、過去を振り返っていた」
「両親の大きな衣装ダンスの中にライフ(Life)誌が詰め込まれていた。私はいつも日系人の強制収容、スペイン内戦(Spanish Civil War)、第2次世界大戦(World War II)、政府の犯罪委員会などの写真を見ていた。私はいつも歴史とともにある」
エルロイ氏は、人間は現代に追いついていくことはできるがボクサーは別だと述べて、バンタム級の井上尚弥(Naoya Inoue)ら今のお気に入りのボクサーの名前を何人か挙げた。ただ、当然のことながら、ボクシングでさえ「1970年代の偉大さにはかなわない」と話す。
「あの時代には、私にだって髪があった」とエルロイ氏は言うと、ほほ笑んだ。(c)AFP/Fiachra GIBBONS