【1月5日 AFP】米作家ジェイムズ・エルロイ(James Ellroy)氏は頑固だった――いつも通り。

「ブラック・ダリア(The Black Dahlia)」「LAコンフィデンシャル(L.A. Confidential)」などの作品で知られるエルロイ氏は、フランス・パリで行われたAFPとのインタビューで、「いかなる状況下でも私は現在について語らないし、現在についての質問にも答えない。それについて書くこともないし、話すこともない」と言い切った。

 開始後2分で、エルロイ氏ははげ頭に血管を浮かばせながら、インタビューを打ち切ると言い出した。「文化よりボクシングが好きだ」と語るエルロイ氏とのインタビューは、素手で殴りあうスポーツのようなものだと長年言われている。

 最も好戦的な米作家と呼ばれるエルロイ氏の最新作「This Storm(原題)」は、真珠湾(Pearl Harbour)攻撃の直後を舞台にしている。

 同氏はこの作品に出てくる白人至上主義者および隠れファシストは、近年米国に台頭する極右を表したものではないと話す。「実は現在の米国のことを書いているのではないか、という質問にうんざりしている」「このばか。ノーだ。そうじゃない!」と憤慨しながら言い放った。

■ムソリーニを引用

 1941年末のメキシコとエルロイ氏の出身地であるロサンゼルスで織りなされる壮大で重層的な物語である「This Storm」は、イタリアの独裁者ベニト・ムソリーニ(Benito Mussolini)の「血のみが歴史の車輪を動かす」という言葉で始まる。

「ムソリーニの挑戦的な響きが好きだ」とエルロイ氏はゆっくりとした口調で語った。「称賛に値する人間だとはとても言えないが、その発言にはある種の真実が含まれている」

 600ページを超えるドアストッパーにもできそうなぐらい分厚い「This Storm」は、流血の描写に事欠かない。

「大長編が好きだ」とエルロイ氏。「私にとっての声明文だ」

「フィリップ・ロス(Philip Roth)みたいな、書くたびに本が薄くなっていくような連中にはなりたくない。壮大なビジョンのあるどでかい話を書きたい」と、偉大な作家を引き合いに出しながら語った。