【12月2日 AFP】ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は1日、反テロ罪で拘置され仮釈放された人物の監視を強化するよう治安当局に指示したと発表した。総選挙まで2週間を切る中、先月29日に英ロンドン中心部で2人が死亡した刃物襲撃事件を政治利用していると、遺族などから批判が噴出している。

 ジョンソン氏は「私に過半数議席を与えてくれれば、皆さんをテロから守る」と題した文章を大衆日曜紙メール・オン・サンデー(The Mail on Sunday)に寄稿。野党・労働党が政権を担っていた2008年に法律を改定して受刑者の仮釈放を認めたことを非難し、もし今月12日の総選挙で当選したら最低14年の禁錮刑を導入すると公約した。

 これに対し、ロンドン橋(London Bridge)付近で起きた刃物襲撃事件を政治利用しているとの批判が出ている。事件は、反テロ罪で拘置された後に仮釈放され保護観察中だったウスマン・カーン(Usman Khan)容疑者(28)が起こしたものだった。

 ジョンソン氏を批判する人々の中には、事件の被害者の一人、ジャック・メリット(Jack Merritt)さんの遺族も含まれている。メリットさんはケンブリッジ大学(University of Cambridge)犯罪学研究所に勤務しており、事件当日はロンドン橋近くで同研究所が主催する犯罪者の社会復帰プログラム開設5周年の記念イベントに参加していた。

 遺族は声明文で、メリットさんは「本当に好きな仕事をしていて」命を落としたのだと指摘。ジョンソン首相は襲撃を受けて量刑制度の厳格化を明言したが、メリットさん本人は「報復ではなく、償いと社会復帰を信じ」て「いつも弱者に寄り添っていた」として、「この恐ろしい孤立した事件を口実にして、政府が量刑を厳格化したり必要以上に長期的に受刑者を拘束したりすることを、ジャックは望まないだろう」と表明した。

 カーン容疑者は拘置中にケンブリッジ大の社会復帰プログラムに参加しており、当日のイベントには刃物2本を所持して出席。会場で5人を刺した後、ロンドン橋の上で警察に射殺された。(c)AFP/Joe JACKSON