【11月29日 AFP】1989年に英イングランドのサッカースタジアムでリバプール(Liverpool FC)のサポーター96人が死亡した「ヒルズボロの悲劇(Hillsborough Disaster)」で28日、重過失故殺の罪に問われていた元警察官に無罪判決が言い渡された。

 被害者の遺族は数十年に及んだ戦いの末、当時警備責任者だったデビッド・ダッケンフィールド(David Duckenfield)被告を訴追していた。

 しかし、事故当日の試合で警備の指揮を執っていた元本部長で、すでに退官している75歳のダッケンフィールド被告は、英北西部にあるプレストン刑事法院(Preston Crown Court)で6週間かけて争われた裁判の結果、傍聴席の人々が固唾をのんで見守る中、陪審員長が無罪の判決を下し、身の潔白が証明された。

 英スポーツ史上最悪の惨事は1989年4月15日、シェフィールド(Sheffield)のヒルズボロ・スタジアム(Hillsborough stadium)で行われたリバプールとノッティンガム・フォレスト(Nottingham Forest)とのFAカップ(FA Cup)準決勝で起きた。

 2016年の検視官の審問で陪審は、被害者が不当に殺害されたと結論づけた。2年に及んだ審問の末、陪審は警察の判断が被害者の死の「原因、または一因となった」と結論づけ、「重大な過失」に等しいと断じた。なお、当時の法律により、ダッケンフィールド被告は事故の4年後に亡くなった被害者1人の死について責任は問われていなかった。

 無罪判決を受けて事故で10代の娘2人を亡くしたジェニー・ヒックス(Jenni Hicks)さんは、「愛する人が不当に殺害された上、誰もその不当な殺人の責任を問われないということを胸に私たちは残りの人生を生きていかなければなりません。そんなの正しくありません」と裁判所の外でコメントした。

 また、18歳の息子を亡くしたマーガレット・アスピノール(Margaret Aspinall)さんはリバプール市内で会見し、「この国の道徳的に誤ったシステムを批判します。この国の品位をおとしめるものです」と話した。

「96人は不当に殺され、いまだに一人も責任を取っていません。誰が96人を墓場に送ったのでしょうか? 96人の不当な死の責任は誰にあるのでしょうか? なんと不名誉で、私たちの国にとって恥ずべきことでしょうか」 (c)AFP/Robin MILLARD, with Paul ELLIS in Liverpool