【11月29日 東方新報】国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)はこのほど、新たに66の都市を「ユネスコ創造都市ネットワーク」として選出し、南京(Nanjing)が中国初の「文学都市」に選ばれた。アジアで3番目。

 創造都市ネットワークは、ユネスコが主体となった都市ネットワークで、2004年に創設された。世界の都市を文学、映画、デザインなどの7分野に分け、都市間でパートナーシップを結び、文化産業の強化による都市の活性化および文化多様性への理解増進を図る役割を担ってもらうことが目的だ。今年秋の段階で世界246の都市が参与している。

 中国紙「解放日報」などによると、文学都市に選ばれる条件はかなり厳しい。(1)ハイレベルで多様な編集出版社が集中している (2)初等教育から中等、高等教育で国内外の文学教育プロジェクトが実施されている (3)文学、詩歌、戯劇などの芸術の影響力が発揮できる都市環境がある (4)各種の文学活動や文学デーによって、国内外文学の発展と交流が促進されてきた (5)図書館、書店など公共および個人の文化機構が国内外の文学の保護、発展、伝播(でんぱ)を推進している (6)多種言語、外国文学の翻訳出版に一定の成果がある (7)メディアやニューメディアを効果的に使って文学の発展と文学作品市場の拡大を推進している ―などが審査される。

 南京はこうした条件に合致しているだけでなく、中国四大古都の一つであり、中国最初の詩歌理論・評論である「詩品」が編まれたほか、中国最初の文学理論・批評書の「文心雕龍」が編さんされ、最初の児童啓蒙(けいもう)読み物の「千字文」、現存最古の詩文総集「昭明文選」などが誕生した土地でもある。

 また、中国の古典名作「紅楼夢」をはじめ「本草網目」「永楽大典」「儒林外史」など、南京とゆかりの深い文学は中国に1万部以上ある。魯迅(Lu Xun)、巴金(Ba Jin)、朱自清(Zhu Ziqing)、張愛玲(Zhang Ailing)といった文壇の巨匠も南京と深い縁がある。ノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)受賞者パール・バック(Pearl S. Buck)の著書「大地」も南京で完成した。

 南京には1000以上の文学社団や協会組織があり、市民による読書会だけでも450組織ある。「南京文学客庁」といった24時間営業の前衛書店はCNNBBCなどから世界で「最も美しい書店」と報じられ、読書家の多い都市としても知られる。

 アジアで文学都市に選ばれているのは韓国の富川(Bucheon)、原州(Wonju)と南京のわずか3都市だけ。文学の舞台になったり、出身作家が多かったりというだけではダメで、現在の出版文化や書店文化、図書館の充実ぶりや、年間の市民の読書量といったところも審査の対象だからだ。最初に文学都市に選ばれた英エディンバラは50社の出版社があり、年間3000冊の本を出版。また、140の図書館があり、年間の貸出数は人口の数倍という。

 これまで選出されてきた文学都市はほとんどが中小都市で、南京のような大都市は珍しい。これはユネスコが南京に文学都市ネットワークの中心的役割を期待しているとからだとみられる。南京市の出版、図書関係者には単に喜ぶだけでなく、世界の文学発展と交流に対する貢献と責任も求められることになるだろう。(c)東方新報/AFPBB New