【11月27日 AFP】ロシアが薬物検査に関するデータを改ざんし、世界反ドーピング機関(WADA)から処分を科されることが濃厚になっている問題で、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)は26日、ロシア選手の2020年東京五輪からの全面追放を訴えた。

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 この問題では、ロシアが1月、2014年ソチ冬季五輪などでの国家ぐるみのドーピング違反に関するデータをWADAの調査チームに提出したが、そのデータが改ざんされていたことがコンプライアンス審査委員会(CRC)で認定された。データの全面開示は、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止を解除する大きな条件だったこともあって、委員会はロシアを国際大会から今後4年間追放すべきだと提案しており、理事会も12月9日に仏パリで行う会合でこの提案を承認する見通しになっている。

 一方でこの処分案では、組織的なドーピング違反に関与していないと証明できた選手は、中立の立場で五輪に出場することが認められる。これについて、タイガートCEOは「手ぬるい」と強い言葉で反論している。

「WADAはもっと厳しい姿勢で、ロシア選手の五輪出場を全面的に禁止すべきだし、それはルールでも認められている」「そうした断固たる対応を取ってはじめて、ロシアの目を覚まして行動を改めさせ、東京五輪に出場する現在のクリーンな選手、また今後出てくるロシアの新しい世代の選手を守ることができる」

 2018年の平昌冬季五輪では、疑惑を取り除いた多くのロシア選手がOAR(ロシアからの五輪選手)の名目で大会に出場し、五輪旗の下で行進した。タイガートCEOは、それを認めるような処分では不十分で、平昌でも、2016年のリオデジャネイロ五輪でも効果は薄かったと話している。

「ロシアはこれからも反ドーピングのルールをあざ笑い、クリーンな選手を足蹴(あしげ)にし、WADAに目つぶしを浴びせて処分をかわし続けるだろう」「WADAはこうした人をこけにした横暴に対して立ち上がるべきだ。ルールと、五輪の価値観がそれを求めている」

「CRCの提案は手ぬるい。何しろロシアのスポーツシステムは政府に管理されていて、それがいつまでたっても不正がなくならない要因になっている」

「リオや平昌での教訓は、ああした抜け道のある対応では意味がないということだ」「世界中の選手が茶番の裏側を見通していたし、あれでロシアが調子に乗った感すらある。そのせいで彼らは証拠を破壊し、サンプルへもっと手を加えるようになり、おかげでロシアにクリーンな選手がいるのか証明することは不可能になった」

「選手が出身国の政府やスポーツ界のペテンの犠牲になるのは悲しいことだ。しかし、ロシアの5年にわたるルール違反に対して今立ち上がらなければ、ロシア以外の選手がもっと大きな被害を受ける」「今こそ、可能な限り厳しい罰を与えるべきだ」 (c)AFP