【11月25日 AFP】中国系オーストラリア人の高級車ディーラーを政治工作員にして連邦議会に送り込もうとしたとされる中国の試みについて、オーストラリア当局が捜査を進めている。情報機関のオーストラリア保安情報機構(ASIO)が24日夜、明らかにした。

 豪メディア大手ナイン(Nine)系列で24日夜に放送された報道番組「60ミニッツ(60 Minutes)」で、中国の工作員が高級車ディーラーのボー・「ニック」・ジャオ(Bo "Nick" Zhao)氏(32)に100万豪ドル(約7400万円)を支払い、メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとしたという疑惑を報じた。

 ジャオ氏は昨年、スパイになるよう打診されたとASIOに明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡しているのが見つかった。

 ASIOのマイク・バージェス(Mike Burgess)長官は24日夜、声明を出し、ASIOは以前からこの件について知っており、「積極的に捜査を進めている」と明らかにした。バージェス氏が声明を出すのは異例。

 バージェス氏は、ジャオ氏の死も捜査対象になっているため、これ以上のコメントは避けるとした上で、「敵対する外国の情報活動は、依然としてわが国とわが国の安全保障に対する脅威となっている」と指摘した。

 オーストラリア議会の情報・安全保障合同委員会で委員長を務めるアンドリュー・ハスティー(Andrew Hastie)議員は、「超現実的」で「スパイ小説から飛び出した話のようだ」と述べた。

 オーストラリアでは23日に、中国のスパイだったという「威廉王(William)」こと王力強(Wang Liqiang)氏が、香港で活動する中国軍の情報将校の身元と、台湾やオーストラリアで行われている活動の内容と資金源に関する詳細な情報を豪当局に提供していたと報じられたばかりだった。(c)AFP